Be My Padawan 4 ― パダワン獲得作戦 ― 

  クワイ=ガン!とっさに言葉がでなかった。が、ジェダイが手に持った包みが眼に入ると、胸の奥から安堵が湧き上がってくる。
「栄養源を取り戻した。アーコナ人は?」
「洞窟の中にいます。急いでください」
オビ=ワンは体の向きを変えて、手で奥を指し示した。

 クワイ=ガンは、一瞬オビ=ワンの顔を見た。血糊と汗にまみれた頬は高潮していた。が、つい今しがた垣間見た少年の表情は恐れも興奮も無く、ただ無心に戦っていた。そして、自分を見た途端、陽が射すように顔がかがやいた。
「すぐ、もどってくる」
クワイ=ガンは瞬間オビ=ワンと眼を合わせ、すぐに洞窟の入り口へ走っていった。


 もう、大丈夫だ。アーコナ人達は助かる。クワイ=ガンが来てくれた。
おびただしい魚竜に狙われている状況は何も変化はない。しかし、オビ=ワンはもう心配しなかった。あとはフォースの導くままにここを防げばいいのだ。そして、さっき思いついた、倒した魚竜を盾にして洞窟の入口をふさげないかということを試みようとした。そのためには、まだまだ多くの魚竜を倒さねばならない。

 魚竜には恐れも憎しみを感じなかった。が、襲うのを止めない限り、戦うしかすべは無い。飛び掛ってくる魚竜をかわし、翼に切りつける。身を屈め、空中高く跳躍して鋭いくちばしを突く。

 無心で動いているうち、不思議な感覚に気付いた。ほんのわずかだが、魚竜の動きが次ぎにどこから来るか読めるようになった。頭の向きが、翼を振るのが、尻尾を上げるのがわかる。そして的確にライトセーバーをその向きに振るえるのだった。オビ=ワンの周りには新たに倒した魚竜の骸が増えていった。



 クワイ=ガンは洞窟の奥に駆けつけると栄養源をアーコナ人達に渡した。ぐったりと横たわっていたアーコナ人達は次第に元気を取り戻した。
オビ=ワンの友達だった少年も起き上がれるようになった。
口々に感謝を述べる大人たちの中で少年はクワイ=ガンに尋ねた。
「オビ=ワンはどうしたのですか?」
「君たちを守る為、洞窟の入り口で魚竜と戦っている。私も行って戦う。君たちの中で出来る者があれば、共に戦ってくれ」

 アーコナ人たちがざわめき出す。海賊に襲われたときも何もせずに隠れていたこの人種は戦うことなどできるのか。が、今は説得している時間などなかった。クワイ=ガンは身を翻して洞窟の外へ走り出した。オビ=ワンと共に戦う為に。

 クワイ=ガンが外へたどり着いたときも、オビ=ワンは戦っていた。素早く進み、下がり、回転し、跳躍する軽やかなその動きは、まるで舞を舞っているように見えた。
小声で呼んだのが聞こえたのか、オビ=ワンが向きを変えてこちらを向いた。
「クワイ=ガン!」

 その時、刃を受けて倒れていた魚竜の尾が突然横に動いてオビ=ワンの背を打ちつけた。
少年の細い身体がよろめき、前に倒れそうになる。そこに口を開け鋭い歯を見せた魚竜が上からおそいかかる。クワイ=ガンは宙に飛び、瞬時に起動したライトセーバーで魚竜の頭を切り落とした。

「今のは少しばかり際どかったな」
着地しすばやく向きを戻して声を掛けながらも、クワイ=ガンの視線はすでに次の魚竜に向けられている。
オビ=ワンも身体を起こしてライトセーバーを持ち直し、クワイ=ガンの横に並んで、顔を前に向けながらちらとクワイ=ガンを見た。
クワイ=ガンが肯く。
「さて、いくらか加勢できるぞ」
緑色に輝くライトセーバーを構えたクワイ=ガンが言った。



 二人がともに戦ったのは初めてだった。にもかかわらず互いのフォースが一体となって回りを取り巻いているのを感じる。言葉にださなくても互いの動きがわかった。どちらへ動くか、いつ打ち込むかが少しの疑いも無くわかる。クワイ=ガンが前に出るとオビ=ワンは下がって彼の背後を守り、オビ=ワンが右に飛ぶとクワイ=ガンは必ずその左をかためた。

 魚竜の屍はうず高く積もって次第に魚竜の侵入を防げるほどに近づいて来た。それに武器を持った味方が背後から二人のジェダイを援護した。

 この入口は何とか死守できそうだった。そこへ、アーコナ人が息を切らして走ってきた。
魚竜は洞窟の細い隙間を外から力任せに崩し、新たな入り口を作って侵入しようとしているという。
クワイ=ガンとオビ=ワンはここを他に任せ、その場所に急いだ。

 すでに、大勢のアーコナ人が武器を持って魚竜と戦っていた。ジェダイは隙間の外に出て先ほどと同じ様に倒した魚竜の身体を盾にして入口を塞ごうとした。そして、今や進んで戦っているアーコナ人達も負傷者を出しながらも勇敢に戦った。

 魚竜は多くの仲間を失いながらも、得物をあきらめずに次々を隙間を広げて洞窟の中に入り込もうとしてくる。洞窟の中の者はすべて一人残らず、武器を持って必死に戦った。

 黄昏の近づく頃、クワイ=ガンとオビ=ワンはほとんど休む事無く、まだ戦っていた。次第に光が薄れていく中、それまで只うるさく鳴き交わしていた魚竜の声がふいに止んだ。何事かと思う間も無く、どこからか、鋭く高い鳴き声が響き渡った。すると、魚竜たちは一斉に頭を同じ方角に向けた。やがて、それが合図だったのか次々と翼を広げて舞い上がり、空に飛び立った。高いところで大きな黒い群れとなり、ゆっくりと崖の上を旋回し、多くの仲間の死骸を残し、陽の沈む方向を目指して去っていった。


 その魚竜の群れを見上げ、人々は言葉もなく立ち尽くす。本当に魚竜は攻撃を止めたのだろうか。だが、黒い群れが沈みゆく陽と共に見えなくなったとき、初めて助かったという実感が湧き上がった。どこからともなく、歓声が上がる。そして一人がジェダイに向かって拍手を始めると、その拍手は次第に洞窟中に広まって、皆の命を救ってくれた二人のジェダイに惜しみない感謝と喝采をおくっていた。

 オビ=ワンはライトセーバーをベルトに戻し、この賞賛にとまどいながら、隣りのクワイ=ガンを見上げる。クワイ=ガンは笑みを浮かべ、オビ=ワンの肩に大きな手を置いた。



 皆が負傷者を運んで客船に戻った時、客船はようやく修理を終えていた。残った乗務員達も又魚竜に怯えながら修理を続けたが、幸い洞窟に魚竜が集まっていったので、何とか日没までに修理が間に合ったと感謝された。思いがけない言葉にクワイ=ガンとオビ=ワンは驚いたが、ともあれ少なからぬ犠牲を出しながらも、この惑星の滞在は終わろうとしていた。


 オビ=ワンは食事を盛ったトレーを持ってクワイ=ガンの部屋に向かっていた。船に戻ったクワイ=ガンはまだ治っていない傷の治療を受ける為先ほど医務室に行ったのだった。ノックすると返事があった。クワイ=ガンは治療を終え、部屋に戻っていた。

 テーブルにトレーを置き、具合をたずねる。
「クワイ=ガン、いかがですか?」
「まあ、少しの間動かさなければすぐ治るだろう」
「あなたは、昨日あれだけの怪我をしたのに今日戦ったんですね」
クワイ=ガンを見るオビ=ワンの表情は感嘆に満ちているように感じられた。
「怪我をしていたからといって戦えなかったと思うか」
「いいえ。ジェダイはいかなる時でも必要があれば全力で戦うものでしょう」
「ああ、ましてお前が呼ぶのを聞いた後ではな」

 クワイ=ガンは腰掛けていた椅子から立ちあがってオビ=ワンの側に寄った。
「私達が感じていたのは、間違いなくフォースを通じた絆だ。師弟でもない二人が感じあえるというのは特別なことだ。それとも、お前は感じなかったのか?」

 目の前に長身のクワイ=ガンが立ち、オビ=ワンを見て静かな声で問う。
オビ=ワンは身体が触れそうなほど近づいた精悍な男に、その体温さえ感じられるような息苦しさを覚えて、知らずに後ずさりそうになる。
それでも、この質問にはきちんと答えねばならない。

 クワイ=ガンを見上げながら声に出す。
「僕が願った時、あなたが応えてくれたと思いました。あれがそうだというのなら……」
「そうだ、オビ=ワン。私達は通じあうものがある。さあ、私のパダワンになるな」
オビ=ワンは視線を逸らし、いく秒かの沈黙の後、辛そうな瞳で再びクワイ=ガンを見上げた。
「僕は……お受けできないのです」

 今度はクワイ=ガンが沈黙する番だった。ややあって、感情を出さない低い声で聞いた。
「理由は?」
「マスター・ヨーダから僕をパダワンに望んでいるナイトがいる事を聞きました」
クワイ=ガンが肯く。
「ご存知だったのですか。ヨーダは僕にテンプルを離れてよく考えるようにと言いました」
急に、クワイ=ガンにある考えが過ぎった。
「もう、誰か決めた人がいるのか?」
「いいえまだ。5人の中から選ぶなど、とても出来ません!」
「5人!」
クワイ=ガンは唸った。

「どなたも、優れたナイトです。それにもう何年も前から申し込んでくれていると聞きました。ヨーダはバンドメアに着いたら、生ける自然のフォース、リビングフォースをよく感じてそれに従うようにと言いました」
「リビングフォースは私の得意とするところだがな。オビ=ワン」
少年は悲しそうに言った。
「僕にはそれがあまり感じられないのです。特に人がどう思っているかわからないようで」
「そのようだな。もしヨーダが間に入らないで、何年か前、直接お前に申し込んだナイトがいたら、お前は受けていたか?」
しばしの沈黙の後、オビ=ワンはゆっくりと答えた。

「おそらく。パダワンになってナイトになることが、僕は自然な事と思っていましたから」
「早い者勝ちか、そのころでは私はお前に会うことはなかったな」
「めったにテンプルにはこられなかったのでしょう?」
「ああ、お前に会うまでは新しいパダワンをとる気はなかったしな」
「あなたが、3年前に僕にそうおっしゃってくれていたら。でも、もう」
「過ぎた事を言っても仕方がない。それにお前はまだ誰のパダワンでもない。まだ遅くはない。そうだな、6番目の候補にしてくれるか」
大きく眼を見開いて目の前の男を見つめたオビ=ワンは、やがて小さく肯いた。

「少しは進歩したな」
クワイ=ガンがオビ=ワンの肩にやさしく手を乗せた。
オビ=ワンは一瞬体を硬くしたが、クワイ=ガンの穏やかな眼差しにすぐ緊張を解いた。
「お前をこれ以上困らせるつもりはない。バンドメアについてからよく考えればいい」
「――はい」
少年はかすかに微笑んだ。


 次の日、オビ=ワンは客船がバンドメアに近づくのを驚きの目で眺めていた。ジェダイテンプルのある惑星コルサントは文明が発達し、惑星の表面はすべて高層建築で覆われていた。だが、船の窓から見下ろすバンドメアの地表は一面の荒野が広がり、その途切れた先には暗い色合いの大海原が広がっていた。

 船はバンドメアの宇宙港に到着した。大勢の乗客が明らかに安堵の表情でぞろぞろと降り立った。二人は惑星政府から出迎えを受け、乗り物で政府の公邸に向かった。公邸につくと出迎えた職員がクワイ=ガンに一通の封書を差し出した。
政府からの連絡事項かと開いて目を通したクワイ=ガンの表情が変わった。
それはオビ=ワンの目にも明らかにわかった。いったい何が起こったのだろう。
その手紙にはただ一言、
「会えるのを楽しみにしておりました。 ザナトス」
とあった。



続く
                                                           

  オビ、張り手一発ってとこですかね。しかしあんまりめげてないマスター。多分百錬練磨…。
次回からザナトス登場です。

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