Be My Padawan16 Final ― パダワン獲得作戦 ―  最終回
 
 どのくらいそうしていたのか、オビ=ワンは何も考えられずに、宇宙船の飛び去っていった空を見上げていた。

 名を、呼ばれたような気がした。
「オビ=ワン」
もう一度、今度ははっきりと耳に届いた。
膝をついたまま恐る恐る顔を上げ振り向いた。
長身の男が風にローブをなびかせて立っていた。

「……クワイ=ガン」
クワイ=ガンがゆっくりと肯く。

 オビ=ワンは弾かれたように立ち上がり、クワイ=ガンに向かって跳ぶように走った。
驚いた顔のクワイ=ガンの口元に笑みが浮かぶ。そうして少年を迎えるように両手を広げた。
オビ=ワンは夢中で、まるで体当たりでもするかのように、クワイ=ガンの大きな胸に飛び込んだ。


 ほっそりした少年の肢体はすっぽりと抱え込まれ、男の胸に納まった。爪先だってもオビ=ワンの頭はクワイ=ガンの肩にも届かない。オビ=ワンはクワイ=ガンの胸に顔を押し付け、止めようとしても溢れてくる涙をクワイ=ガンの服にこするように拭った。

 しゃくり上げそうになるのを何とかこらえながら、オビ=ワンはくぐもった声で言った。
「……行って、しまったかと思いました」
クワイ=ガンは大きな手でオビ=ワンの背を宥めるようにさすった。
「私だって、お前があのままコルサントに行ってしまったと思った」
オビ=ワンの頭の上から聞こえてくる低い声はとても優しかった。

「私が乗る宇宙船は今準備中だ。おんぼろで、パイロットは無愛想だし、貨物船だから客室は小さい。私一人だって狭いのにお前と二人ではもっときゅうくつだ。大型客船の船室とは段違いだぞ」
その言葉に顔を埋めるようにしていたオビ=ワンの動きが止まる。
――お前と二人。
微かな希望が頭をもたげてくる。

 おそるおそる顔を上げると、やさしい眼で見つめられた。
「もう、コルサントには戻れないし、ここに一人で放り出すわけにもいかない。私が連れて行くしかないだろう」
クワイ=ガンはからかうような口調で言った。

 一瞬芽生えた希望がまた、消えそうになる。クワイ=ガンは連れて行くと言ってもパダワンにするとは言っていない。クワイ=ガンはそんなオビ=ワンの表情の変化を可笑しそうに見つめている。
生真面目な少年は唇をかんで決意を固めた。
「クワイ=ガン。どうか僕を――」
クワイ=ガンは人差し指を伸ばし、オビ=ワンの言葉をさえぎった。
「その言葉はマスターから言うものだ」

 クワイ=ガンは後ろに下がってオビ=ワンから身体を離し、次いで長いローブを優雅にさばいて身を屈め、貴人や貴婦人の前で礼を取るかのように片膝をついた。オビ=ワンは驚き、目を見開いてクワイ=ガンを見つめた。マスターが申し込むときは、こんな作法があるのだろうか?友達からは聞いたことがなかった。

 そんな少年の様子をクワイ=ガンは微笑ましそうに見つめ、それから真顔になってオビ=ワンを見上げた。
「オビ=ワン・ケノービ。私のパダワンになってくれるか?」
オビ=ワンは二人の回りを暖かいフォースが取り巻いているのを感じた。
「お受けします。マスター、クワイ=ガン・ジン」
オビ=ワンはクワイ=ガンの深い青色の眼を見ながら、しっかりした声で答えた。

「私はお前をナイトにするため、持てる限りの力を尽くすことをフォースに誓う。お前が一人前のナイトになるまで、この誓いは続く。これは師弟の間の神聖な絆だ。」
「そして、僕はあなたに従います。マスター」
オビ=ワンも神妙な口調で答えた。


 クワイ=ガンは静かに立ち上がってオビ=ワンの肩に手を乗せ、なりたてのパダワンがびっくりする言葉を吐いた。
「ついに私のものになったな。もう取り消しはきかないぞ」

 ぱかんと口を開けたオビ=ワンを見てにやりと笑う。
「マスター・ヨーダに連絡しよう。やっとあの人の鼻を明かしてやったぞ」
だが、とクワイ=ガンは続ける。

「どうも、ヨーダに仕向けられたような気もする。まあ、お前が承知してくれたのだからどちらでもいいが、これからはヨーダと顔を会わせる事も多くなる。次の任務が済んだらテンプルに戻ろう」
「本当ですか」
「ああ、パダワンを教育するにはテンプルを拠点にしたほうがいい。お前もまだテンプルで受ける訓練があるし、友達にも会いたいだろう」
「はい、マスター」
オビ=ワンは顔を輝かせてクワイ=ガンを見上げた。


 クワイ=ガンは手をオビ=ワンの背に当てて促し、宇宙船に向かって歩き出した。長身のクワイ=ガンの歩みは速い。オビ=ワンは早足でマスターに付いていった。乗る予定の宇宙船の側まで来ると、パイロットがもう少しかかるとクワイ=ガンに告げた。クワイ=ガンはオビ=ワンを連れて行く事を話し、さっき無愛想だと言っていたパイロットも追加料金を提示されて承諾した。

 オビ=ワンはおとなしく二人の話を聞きながら、上気した顔でうれしそうにこれから乗る小型宇宙船を見上げている。


 クワイ=ガンはようやっと自分のパダワンになった少年のそんな姿を見ながら、これまでの事を思い出した。
テンプルで初めて申し込んで断られ、心底驚いた。当初は軽く考えそれから何度か試みたが、オビ=ワンは中々手ごわかった。二人の間に絆が通い、頼りにはしてくれていたが、パダワンになることは承知しなかった。

 ザナトスの計略で浚われ、オビ=ワンは命さえ落としそうになった。自分の為にこれ以上危険を冒させられないと、弟子にするのをあきらめてテンプルに戻そうと思った。

 が、最後の最後でオビ=ワンは自ら決心して自分の元に飛び込んできた。一時オビ=ワンを行かせようとした決心さえ、あっさりと撤回させられてしまった。あんなふうに全身全霊で呼ばれては、とても手放すことなど出来ない。

 クワイ=ガンは、オビ=ワンの肩先で揺れている金褐色のブレイドを手にとって持ち上げた。
「少し短いな」
「マスターがそうおっしゃるのならもっと伸ばします」
「長いほうが好みだな、いつでも引張れる」
オビ=ワンが困惑した顔でクワイ=ガンを見上げた。

「前から思っていたんだが、お前の目の色は良く変わるな」
「え?」
「始めは明るいブルーだと思ったが、気分や光の具合でグリーンやグレーにもなるし、ごく薄い色にもなる」
「自分ではわかりませんが」
「水の表面が天候や光の加減で変化するような瞳の色だ。そうだな、海よりは湖の色だ」
オビ=ワンは思いがけないことを言われ、益々困惑した顔になった。

「天然の大きい湖は見たことがないか?」
オビ=ワンが肯く。
「それからは多分いろんな惑星へ行くことになる。いつかそんな湖を見せてやろう」
オビ=ワンはうれしそうににっこりした。


その時、パイロットが用意ができたと大声で呼ぶ声がした。
「では、いこうか。パダワン」
長身のジェダイマスターは、弟子の少年のほっそりした肩に優しく手をおいた。
「イエス、マスター」
こうして、二人はこれから続く長い旅の第一歩を踏み出した。



END
                                                           

  ――というわけで、パダワンナンパ話。もとい獲得話。押してだめなら、引いてみる、という経験豊富なマスターの作戦勝ち(?) クワイ=ガンがオビをゲットして終了でございます。
 JAにちょっとばかり納得いかなかった事から膨らんだ、オビがマスターをふりまくるという逆JA話。さて、オビは何回クワイ=ガンをふったのでしょう。あなたのうっぷんは晴れましたでしょうか。
 長々とおつきあいいただきまして、本当にありがとうございました。こんな、しょーもない話で頭がいっぱいの管理人に、感想などいただけたらとてもうれしいです。          ―みずき―


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