Again 2    ― 再会 ―     
  
  ほぼ毎晩、新たな訓練は続けられた。クワイ=ガンはダコバのヨーダとも交信しており、消息を聞く事もできた。

「あなたの距離や空間の観念はどういったものですか?」
『乱れのないフォース、ライトフォースなら望めばいつでも側にはいける。だが、相手がこちらに気付くことはほとんどない。ヨーダのように特に優れたジェダイでもなければ』
「マスター・ヨーダはさぞ出来のいい弟子でしょうね」
『早くトレーニングを始めたからな。それに、おまえより少しばかり年上だ』

 オビ=ワンはうれしそうにくすくす笑った。
「今やあなたがヨーダと私の師なんて。テンプルのマスターは弟子を一人しか持てなかったのに、時代は変わりましたね」
『トレーニングが進めば、お前は私の姿が見えるようになるだろう』
「そんなことが可能なんですか!?」
『おそらく。ただ、あくまでお前がフォースを通じて望む私の姿だが』
「努力します。マスター」


 ほどなく、オビ=ワンはぼんやりとした青い影を視界に捕えられるようになった。訓練が進むにつれ、その影は少しずつ人型をとりはじめ、話にあわせて動くのもわかるようになった。が、まだ誰と特定できるほどはっきりしない。訓練が進んでるとわかってもオビ=ワンはもどかしかった。

 ある晩、それが気持ちにでたのか、いつもは小さなテーブルごしに見えるクワイ=ガンの青い影が、訓練の終わり間際にす、と近づいた。

『私たちはずっといっしょにいられるんだ。急ぐことはない。オビ=ワン』
クワイ=ガンの声はずっと近く、耳元で囁かれたように感じる。
「マスター…」
『私の弟子の身上は忍耐だっただろう?』
「あなたのフォースがわかります。前と同じです」
『おまえのフォースは、より強く、明るく、澄んできた』
「自分ではわかりません」

低く笑う気配がする。
『お前は昔から自分のことは無頓着だった』
クワイ=ガンの青い影が離れていく。
『では又明日、お休み。オビ=ワン』
「おやすみなさい。クワイ=ガン」


 数日後、オビ=ワンはひさしぶりにイオピーにのって外出した。ラーズ家の農場をそっとうかがうと、ルークがクッションにすわっているのが見えた。小さな手を差し伸べ、何か呼んでいるようにしきりに声を出している。と、ベルーが寄って来て、やさしく赤ん坊に話し掛けた。オビ=ワンはその光景に目を細め、静かにその場を後にした。

オビ=ワンはモス・アイズリーでいくばくかの食糧と必需品を求め、小さな鏡も買った。

 夕暮れ頃家にたどり着き、汗と砂にまみれた身体をたんねんに拭いた。そうして、壁に鏡を吊るし、久しぶりにていねいに髭をあたった。伸びていた髪も切って整えた。砂漠の強い日差しで、金褐色の色が少し薄くなってきたような気がする。

――まあ、見苦しいていではないな。
道具をしまい、オビ=ワンは清潔なチュニックに着替えた。


「こんばんは。マスター」
『オビ=ワン』

 いつものように現れたクワイ=ガンの姿は、数日前よりさらに見分けやすくなっていた。青い影が次第に明るく、透明に近づき、まるでホロ映像のように目に映る。惜しむらくは、状況が良くない通信時みたいに、いまひとつ不鮮明なことだった。

「あなたの顔がわかります。表情までは、もう一息ですね」
『髪と髭が短くなったな』

オビ=ワンは微笑んだ。
「ルークの様子を見にいった後街にいき、買物ついでに鏡を買いました。見苦しい風体のままでは師に失礼かと思いまして」

クワイ=ガンが片眉を上げた。生前、見慣れたその表情。急に、オビ=ワンは自分がそれを確かに見たことに気付いた。――影の見え方にむらがあるのだ。

「このまえ、無頓着とおっしゃられたので」
『そういう意味にとったのか、まあお前らしいが。私の為にきれいにしてくれるのは大歓迎だ』

 クワイ=ガンが自分を見ているのを感じて、オビ=ワンはふいに恥ずかしさにおそわれた。
あわてて話題を変え、早口で言う。
「ルークは元気で大きくなっていました」
『それは良かった』
「前置きはこれぐらいにして、トレーニングをお願いします。マスター」

 クワイ=ガンのビジョンを見たい、生前の姿と再会したい。というのはオビ=ワンの切なる願いだったが、クワイ=ガンに言わせれば、それは訓練が進めば付随的に発生し、自然に見えてくるので特に重要ではないという。

『大事なのは、いかにフォースとひとつになりながら己の意識を残すかだ』
それには、と続ける。
『すべての気持ちを開放し、フォースに身をゆだねる。いうは易いが、ジェダイでもおこなうのは難しい。いっさいの執着を断ち切らねばならない』

 クワイ=ガンのフォースに導かれ、オビ=ワンは目を閉じて瞑想に入った。自分のフォースと師のフォースが混ざり、溶け合い、ひとつになるのを感じる。昔、パダワンだったころ体験したことがある――。オビ=ワンはそれを思い出していた。

『いま、この瞬間に集中を』
クワイ=ガンが囁く。
「イエス、マスター」


 どれだけ時がたったかなどわかるはずもない。
オビ=ワンはフォースの宇宙からゆっくりと帰還した。息を整え、静かに目を開けた。

「マスター!」

 目の前にかつてと同じ姿のクワイ=ガンが立っていた。正確にいえば生身ではなく、青く透けるホロに似ているが、今までよりずっとはっきりしている。青い濃い瞳も、秀でた額も、白髪まじりの亜麻色の長髪も。
オビ=ワンは思わず手を伸ばした。が、その手は長身のクワイ=ガンの身体をすり抜けていった。



「――不思議な気がします」
『すぐに慣れる』
オビ=ワンは椅子に腰掛け、向かいに用意した椅子にはクワイ=ガンが腰を下ろしていた。
「ええ、そうですね。今までだって話をしていたんですから」
『お前のトレーニングが進んだ結果だ』
「いつもいい師に出会えて幸せです」

 クワイ=ガンは軽く眉をあげて弟子を見た。
『それはどういう――。いやいい。がまだ、ほんの入口だ。これからさらに続けねばならん』
「イエス、マスター。ところで、あの……」
『何だ』
「これからはあなたがいればすぐ姿を見てわかると思いますが、トレーニング以外で来ていただくわけにはいきませんか」
クワイ=ガンはオビ=ワンをじっと見つめた。
『私はフォースの一部なので、長く地上に留まるわけにはいかないし、ヨーダにも会わねばならん』

 だが、とクワイ=ガンはテーブルごしに手を伸ばして、オビ=ワンの頬に大きな手を添えた。実体も重さもないが、それは温かなぬくもりがあるようにオビ=ワンには感じられた。

『出来るだけお前の側にいよう』
「ありがとう、ございます」
『他人行儀だな』
クワイ=ガンは可笑しそうに呟いて立ち上がった。

『さて、もう遅い。寝る時間だろう』
「ああ、そうですね。引き止めてすみません」
『いてくれといったのはそっちだろう』
「え?」
『いっしょに寝るわけにはいかないが、寝付くまでいよう』
「え、いや、だって、そんな――」

 オビ=ワンのうろたえぶりを見ながらクワイ=ガンは笑った。
『昔は互いの寝顔を見た仲だ。それともまずい事でもあるのか?』
「クワイ=ガン」
『私の後に恋人はいなかったのか?』
「いませんよ!わかってるくせに」
『聞いてみたかっただけだ。ベッドはそっちだな』


 オビ=ワンはローブを脱いでフックに掛け、ブーツを脱いだ。ベルトははずしてライトセーバとともにベッドサイドのテーブルに置く。ジレを脱ぎ、そこで手が止まった。
側に立っている長身の師を上目使いでちらりと見る。

『寝支度は終りか。お前は一人寝の時は寝巻きを着ていたからな』
「あなたは前と少しも変わっていないじゃないですか」
オビ=ワンは溜め息をついた。
「いつもからかって。そんなふうに見られたら私は」
『そうだな、いつまでたっても私の恋人は恥ずかしがり屋だった』
「クワイ=ガン……」

 オビ=ワンが振り向くと、すぐ目の前にクワイ=ガンの姿があった。

『愛している。今でも、少しは私を想ってくれるか』
「愛していますよ。今までも、そしてこれからも」

二人は互いの瞳を見つめあった。実体のない姿と抱きあうことは出来なくとも、
互いに暖かなフォースが取り巻いているのを感じる。

 突然、オビ=ワンは悟った。

「私たちはもう離れることはないんですね。クワイ=ガン」
『ああ、もともとそうあるべきだった。戻って来たんだ』

オビ=ワンの目からひとしずくの涙があふれ、静かに頬を流れ落ちた。

「オビ=ワン!?」

 オビ=ワンは微笑み、指で目元をぬぐって小さく鼻をすすると、そのまま黙って衣服を脱ぎ始めた。チュニックを肩から落とし、レギンスから足を引き抜き、――それから、下着の縁に手をかけた。

 最後の一枚を脱ぎ終えると、手を両脇に垂らし、クワイ=ガンのほうを向いた。
クワイ=ガンは、しばらく闇に浮かぶ白くしなやかな肢体を、ただ、見つめていた。

『――美しい。覚えていたよりずっと』
「この歳まで生きて、あなた以外の誰かのものになりたいと思ったことはないんですよ。情けないことに」

クワイ=ガンが肩を小さく揺るがし笑う。
『お前のように手におえない弟子を扱える者が、私の他にあると思うか』
オビ=ワンもわざと皮肉っぽく応える。
「その言葉そっくりお返ししますよ」
『お前といれば絶対退屈しそうもないな。さて、もう何か着たらどうだ。冷えてきただろう』

 オビ=ワンは悪戯っぽい目つきで師を見上げると、ベットに近づき、そのままカバーをめくって中に身を横たえた。
『オビ=ワン?』
「今夜だけは、こうして寝たい気分なんです」

 クワイ=ガンは立ったままベッドのオビ=ワンをみていたが、やがてベッドの側に寄り長身を屈めた。顔が近づく気配にオビ=ワンは思わず瞼を閉じた。
『お休み、いい夢を。わたしのオビ=ワン』
羽のように軽い温かな感触が、一瞬唇をかすめた――ようにオビ=ワンには感じられた。
『おやすみなさい。クワイ=ガン』
オビ=ワンは微笑んで眠りに落ちていった。
――遠い昔、クワイ=ガンのパダワンに迎えられた晩、笑みを浮かべて眠りについた小さな少年の面影を残して――。

END

 EPVには期待していたマスターのお出ましはなかったんですが、最後にヨーダ様やってくれました!彼との交信方法を教えると言われたときのオビ=ワンの「クワイ=ガン!」のビックリ顔、可愛かったですね〜。声もキュート。
 さあ、再会した二人はこれから楽しいハニームーンvv 妄想も膨らみます♪ どうしてこんなに腐女子のツボ直撃かなSWは。Thank you George!


アリ様の3万ヒットキリリクゲットして頂戴したイラストvv  オビを見守るマスターのなんと愛しそうなまなざし。そっと重ねられた手。苦労したオビがやっと報われた、と感じさせてくれる瞬間を目に見える形で現してくださいました。
超多忙なアリ様に無理を言ってお願いしましたが、待ったかいがありました。感謝しきれません。心よりお礼申し上げます。


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