5th Anniversar 2 ― 5年目 ―    ※ 恋愛未満
 
 二人はテンプルに戻って来た。任務の報告を済ませ、待ち受けた人々に頼まれた物を配る。山のような品物はあっという間に無くなった。後に残ったのはクワイ=ガン用のワイン数本とクッションほどの大きさの軽い包み。


「マスター、これは誰に頼まれた物ですか」
「私からお前の誕生日の贈り物だ」
「えっ」
「少し遅くなったが、18歳おめでとうオビ=ワン」
「ありがとうございます」
包みを開けると、生成り色の柔らかな目の積んだ生地が表れた。
「これは、なんですか?」
「チュニック用の生地だ。かなり上等のものだ。これで身体にあった服を仕立てよう」
「マスター、すごくうれしいです。ありがとうございます」
クワイ=ガンは弟子の感激ぶりに満足そうに肯く。

「始めはローブにしようと思ったんだが、先を越された。だが、これでチュニックを作ればちょうどいいな」
「一度に両方なんて、もったいないようです」
嬉しそうな弟子を見ながら、クワイ=ガンは内心5年前の埋め合わせと思っている。
「お前のそんな顔は、5年前とあまり変わらないな」
「童顔だっていうんですか。本当に18です。そうだ、マスターそのワイン味見させてもらえませんか?」
「これは、とっておきの物だぞ」
言いながらも、オビ=ワンにグラスを持って来いと告げた。


 ワインを注いでやると、オビ=ワンは嬉しそうにグラスを持ち上げた。
「深みのある赤というんですか。きれいな色ですね。香りもいい」
少し口に含んで、満足そうに言う。
「甘くないけど、おいしいです」
「知ったような事を言うな。パダワン。お前には10年早い」
言いながらも、クワイ=ガンは弟子のグラスに再び注いでやる。
そうこうしながら、ワインの瓶は短時間のうちに空になった。

「オビ=ワン、ほらここで寝るんじゃない」
「ん…」
ほんのり赤い顔の弟子が眠そうに身体をおこした。
「まったく、18になっても急に酒が強くなるわけでもないんだぞ」
「寝てなんか…、いません」
クワイ=ガンは軽く溜息を付く。
「私もつい飲ませすぎた。部屋に行って寝なさい」
はい、と弟子は立ち上がり、ややおぼつかない足取りで歩き出す。
「そっちは部屋じゃないぞ」
「シャワーをあびたいんで」
「今日はいいだろう」
「酔いを醒まします」
オビ=ワンは気だるげな声で言って、洗面所に入っていった。
ややあって、シャワーの水音が聞こえてきた。


 クワイ=ガンは苦笑しながら、オビ=ワンを見送った。弟子は大人になったかと思うとふいに子供っぽくなる。
かと思えば、分別ある様子も見せる。まだまだ目が離せない。そして、自分がそれを楽しんでいることに気付いた。
あの子は紛れもなく自分のパダワンだ。

 突然、物がぶつかる音、崩れる音、叫び声がした。急ぎバスルームの戸を開けると、オビ=ワンが壁に背を持たれかけて、足を投げ出していた。すべって尻餅をついたことは一目でわかった。うな垂れて、低くうめいている。
師は今度は大きく溜息を付いた。
「酔いを醒ますどころか…、立てるか?」
はい、と答えるが足は投げ出したままだ。
クワイ=ガンはバスタオルをとろうと洗面所を見るが、帰ってきたばかりで、タオルの補充もしていないことに気付く。
普段はオビ=ワンがしている。
とりあえずシャワーを止め、オビ=ワンをかかえ起こそうとしたが、このままでは自分も濡れてしまう。
リビングに戻り、あの生成りの生地を手にして戻った。

「ほら、立ちなさい」
オビ=ワンは腕を引かれてやっと起き上がり、クワイ=ガンの肩にもたれるように立っている。
生地を広げて背から身体を覆ってやる。それでも、弟子はとろんとした目でなすがままにしている。
仕方が無い。クワイ=ガンは弟子の身体に腕を回した。

 ふっと身体が浮いた。オビ=ワンは自分の見ているのが天井だということに気付いた。
「マスター?」
「こら、動くんじゃない」
クワイ=ガンはオビ=ワンをすっぽりと布に包んだまま抱き上げ歩いていた。
一瞬何が起きたかわからず、頭を上げようとしたが制され、おとなしく師の胸に顔を寄せた。

 部屋に運ばれ、ゆっくりとベッドに下ろされた。
横たわって、しばしぼんやりしていたオビ=ワンは師が眉をあげて、口を開くのを見た。
「寝巻きはどこだ」
 とたんに我に返る。あわてて身体を起こすと、何も身につけないままの姿を師が見ていることに気付いた。
同性同士、互いの裸など何度も見ている。が、師が服を着たまま、自分は素裸のままベッドに横たわっているという状況は、とてつもなく恥ずかしいものだった。
羞恥にオビ=ワンの顔が瞬時に真っ赤になる。とっさに布を引き上げ身体を隠した。
ほう、と師は目を細めてワインの酔いとは違う弟子の顔色をおかしそうに見た。

「…すみません」
消え入るような声で詫びる。
「ちゃんと寝巻きを着て寝なさい。わかったか」
「はい」
クワイ=ガンは屈んで、うな垂れているオビ=ワンの顔を覗き込んだ。口元に笑みが浮かび、なぐさめるような口調に変わった。
「若い時は酒の加減がわからんものだ。私だって、結構失敗したことがある」
「……」
「次から気を付ければいい。気にするな」
優しい目で見つめられ、オビ=ワンがこくんと頷く。
クワイ=ガンは大きな手で弟子の短い髪をくしゃくしゃと撫でると、部屋を後にした。


 結局、その生地でオビ=ワンの新しいチュニックは仕立てられなかった。まだ身長が伸びる見込みがあるから後でいいと弟子は言ったが、やはり酔って布にくるんで運ばれた出来事がかなり身に染みたらしい。以来、オビ=ワンはどこで酒を飲んでも、慎重にセーブするようになった。
こうして、オビ=ワンのローブとチュニックのサイズは以前のままになった。


End ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おまけ 





































































  
6th Anniversary
         ―6年目―

 およそ一年後、二人で同じベッドを使うようになってからあの生地は使われ、贅沢なシーツ変わりになった。
誕生日の晩、ふとクワイ=ガンが思い出したように言った。
「そういえば、お前は案外色が白かったな」
「え?」
「あの時初めて気付いたが、思えばずいぶん艶っぽい眺めだった」
弟子は黙ってベッドを出て、寝巻きを着た。
「どうした」
「リビングのソファで寝ます。それともマスターが部屋に戻っていただけますか」
「怒ったのか」
クワイ=ガンは立ち上がり、再び黙ったオビ=ワンを後ろから抱きしめた。
「すまん。それほど気にしているとは思わなかった」
優しく耳元で囁く。
「今思うと、あの時からこうなるのがわかっていたかも知れん」
「マスター…」
「私はとっくにお前に落とされていたのだよ。マイパダワン」
そっと首筋に口づける。
オビ=ワンはゆっくりと振り返り、師の首に腕を回しながら言う。
「側にいると決めた時から、私はずっとあなたのものでした」



End


 10th Anniversary 同様、誕生日シリーズ?! 出来上がる前の健全師弟。大人になりかけのオビと親ばかなマスター。バカップルならぬ、はちゃめちゃ師弟。
オビの18歳の記念日はさんざんだったようで、命の恩人とか言ってる方々にはこんなジェダイの姿、絶対にお見せできません。 

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