頂きもの 「シンメトリカルイデア」裄上千秋様 1万打記念 お題リクエスト

「一進一退」


 ○月×日   オビ=ワンの日記
 
 今日の朝マスターに、「向こう半年間、絶対に生き物は拾ってこない」と約束して貰った。

 でも今日の夜マスターは、何故か川に落ちていたカーネルサンダース人形を拾ってきた。 

                               一番目、一進一退、一発ネタ(馬鹿か私は)。 
(マスターは酔って帰る途中、ついやらかしてしまったんですね)
「だから、生き物を拾ってきたんじゃないだろう」
「同じ事ですっ!片付けるのは私なんですからね」
「不法投棄を回収したんだ。環境保護に寄与したんだぞ」
「言い訳しても駄目です。後半年延長!あ、外で飲むのも半年は控えてください」
「だからあれは生き物じゃないっ!」
 師弟の攻防は続く――   by M







「天衣無縫」



 千の泉の間に、一本だけとても大きくて高い樹が立っている。
 綺麗な花を咲かせる訳ではないが、青々とした力強い葉を沢山持っていて、そしてマスター・ヨーダのフォースの様に深くどっしりとした雰囲気を漂わせる、老齢の樹だった。
 
 オビ=ワンは、初めて見た時からこの樹に登ってみたかった。
 小さな自分の体では天辺まで見えない程大きなこの樹に、自分の力で登ってみたかった。
 人目を盗んで挑戦してみた事も何度かあったが、力も弱く手も短い自分では、到底無理だった。
 
 でも、今日こそは。
 今日、自分は6歳になったのだ。6歳といったら、多分充分大人だろう。前よりもずっと背も伸びたし、力も強くなったし、きっと今日こそはこの樹に登って、そして高い場所から下を眺めてやるのだ。
 オビ=ワンは決心すると、太い幹に手をかけて一心不乱に登りはじめた。
 下から見上げると一番最初に目に入るとっても大きくて立派な枝、そこに腰掛けて周りを見渡したら、どんなにか気分が良いだろう!きっと、今まで一度も見た事がない位、吃驚するような景色が自分を待っているに違いない。

 何度もずり落ちそうになりながらも、オビ=ワンは必死に登っていった。ジェダイになろうと目指す者は、そう簡単に諦めてはならないのだ。手が痛くても疲れても、一度決めたんだからその場所に辿り着くまでへこたれたりしたらいけない。
 そうやって、汗だくになって。
 とうとう、オビ=ワンは目指す枝まで辿り着いた。若干擦り傷を作ったみたいだったが、そんな事気にしてはいられない。その枝に跨って、この世界を心ゆくまで楽しむんだ、と。そう心躍らせて身を乗り出した彼は、直後に驚きの声を上げた。思わず手を離してしまいそうになって、慌ててもう一度しっかりと樹につかまる。
 
 その枝には、先客が居た。
 しかも、自分のような子供ではなく、更にはまだ若いパダワンでもなく、立派な大人の男の人だった。
 その人が、目指す枝の上に足を伸ばして座っていて(よくそれで落ちないで居られる!)、しかも幹に背を預けて居眠りしていたのだった。
 
 
 オビ=ワンは、樹につかまった変な姿勢のまま、その男の人をしげしげと眺めた。
 肩まで伸びた髪と髭を生やした精悍な顔をして、手足は吃驚する程長くて大きい。別に樹に登らなくたって、この人ならあらゆる世界を見渡せそうだ。自分の手では抱えきれない程太くて大きい枝も、この人が座っていると折れないのか不安になる程度の枝にしか見えない。
 ナイトなのか、それとももうマスターなのか、でも兎に角凄く大人の人だ。自分よりずっと長く生きてきて、自分よりずっと沢山の物を見てきた人だ。
 オビ=ワンは猛烈に悔しくなった。
 だって、この人はきっと色んな物を見渡せて、自分なんて及びもつかない程の事を知っているだろうに。それなのに、この場所まで知っていて、そしてここから見える景色も知っているなんて。この人の所為で、自分はそこに座れないし、見たかったはずのものが見られない。折角ここまで頑張って登ってきたのに。
 その場所をどいて、僕に譲って!
 オビ=ワンはそう言ってやろうと心に決めて、もう一度力を込めてその枝の所まで乗り上がった。そして、そっと慎重に手を伸ばし、その人に話しかけようとして―
 
 「残念だが、譲ってはやらんぞ。」
 
 突然、その人が目を開いて、そしてこっちを向いて話しかけた。
 オビ=ワンはいきなりの事に言いかけた言葉も引っ込む程驚いてしまって、口をぽかんと開いたままの格好で、思わず幹につかまっていた手の力も緩んでしまった。
 ふわり、と風に攫われる様に、オビ=ワンの体がぐらついて倒れ込む。
 あ、落ちるな。
 そう思った時にはもう、体は宙に放り出されていて、地面に向かって急降下している最中だった。
 
 
 ぶつかる衝撃を予想してぎゅっと目をつぶったオビ=ワンだったが、何故か体を襲う痛みはなく、恐る恐る目を開くと自分は普通の体勢で着地していた。足の下には、しっかりした地面が広がっている。
 あの樹の上の人がフォースで体を支えてくれたのだという事に、オビ=ワンは気付いた。でも、上を見上げて感謝の言葉を叫ぶ気にはなれなかった。だって、あの人は、自分の所にまで聞こえる程の大声で笑っていたからだ。
 酷い!僕が驚くのを分かっていて、からかったんだ!
 もうあんなに大きな大人の癖に、子供みたいな事をする人だ。
 「ずるい!僕だってそこに座ってみたいのに!」
 ありがとうございますと言う代わりに、オビ=ワンは思いっきり怒鳴ってやった。でも、その人は全く気にした様子もなく楽しそうに笑っている。姿は見えないが、声だけが樹の上から降ってきていた。
 「譲ってくれたって良いでしょう!?」
 「駄目だ。」
 「どうして!」
 「私がここを気に入っているからだ。」
 何て理屈だ。本当にこの人は大人なのか?
 「もう少し大きくなってから、また来い、坊主。」
 「今度は、絶対貴方を突き落としてやる!!」
 「威勢が良いな、楽しみにしてるぞ。」
 端から本気にしていない様な口調でまた笑うその人を、見えないけれど睨み付けて、オビ=ワンは固く心に誓った。
 
 絶対、あの人より大きくなってやる。
 それで、あの人が見ていた物よりずっと沢山の物を見られるようになるんだ。
 そうなったら、今度は自分が、あの人を落っことしてやる! 

                        大きくはなれなかったが、別の意味で落としたオビ=ワンでした。                          で、オビが頬をふくらまして去ったあと、優秀な弟子・ザナトスが登場。
「またここにいたんですね。人に見られたら私が恥ずかしいです、マスター」
「そんなへまはしないさ」
「それにあんな小さな子をからかって、大人気ない」
「なかなか良い目をしてにらんでいたぞ」
「――けっこう可愛い子、でしたね……」   by M
  

 千秋様の1万ヒットの御題募集に応募してゲットしたお話(バンザ〜イ!!!)
スケールの大きい長編からスパイスの効いた小噺までオールマイティにこなされますが、SSにときおり出没する変人パダオビと一応まとも?なマスターの師弟漫才(笑)が大好物です。つい、外野席からつっこみたくなってしまいました。千秋様ご、ごめんなさぁ〜い(大汗) 

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