Be My Padawan 12 ― パダワン獲得作戦 ― 
 夕暮れ近く、ようやく陸地が見えてきた。自分も座席にもたれて少し休んだクワイ=ガンはオビ=ワンに声をかけ起こした。途中オビ=ワンの寝顔を見ながら決心はついていた。

 まず、オビ=ワンのカラーを取って危険をなくす。その後、オビ=ワンを農場には戻さず手元におく。多少の危険はあっても、自分の知らないうちにザナトスに襲われるのは阻止せねばならない。オビ=ワンが既に意中のマスターを決めたとしても、側にいるうちにそれを覆すチャンスはある。けれど、その前にオフワールドも含めてザナトスと決着をつけねばならなかった。オビ=ワンは手助けになるだろう。

 船を港につけると、オフワールドのビルに行った。中に入ると、ハット達が寄ってくる。
クワイ=ガンの姿を認めてブラスターを構えようとするより速く、緑のライトセーバーが唸りを立てて空を切った。真っ二つで床におとされた銃の残骸をみて唖然とするハットに、クワイ=ガンはライトセーバーの切っ先を突きつける。
「海底鉱山のコントロールパネルはどこだ?」

 案内された場所でオビ=ワンのカラーの発信機を受け取ったクワイ=ガンはさて、とオビ=ワンに言う。
「海底鉱山との通信をすべてオープンにしろ」
オビ=ワンが操作するとクワイ=ガンは楽しそうに言う。
「お前の元の仲間にカラーはすべて無効になると知らせてやろう」

 オビ=ワンはマイクに向かって大声で呼びかけた。
「オビ=ワンだ。今、オフワールドのオフィスにいる。もう、カラーの爆弾は効かない。皆、自由なんだ」
クワイ=ガンのライトセーバーがコントロールパネルに突き立てられる。音を立てて火花が弾け、一瞬にして溶けた装置は金属の固まりになった。

 通信機を通してオォーと歓声とどよめきが上がるのが伝わる。なすすべなく二人を見ていたハット達は、あわてて我先に部屋を逃げ出していった。
「何でもこんなに簡単にすむといいんだがな」
クワイ=ガンはオビ=ワンを見て愉快そうに言った。


 建物の外に出ても誰も追ってこなかった。クワイ=ガンはオビ=ワンを立たせ、少し前かがみになり、大きな手でオビ=ワンのカラーに触れた。
「爆破の心配はないが、道具がないとはずせそうもないな」
慎重にカラーを探るが、留め金や継ぎ目はなかった。クワイ=ガンは残念そうに少年の細い首にそっと指先で触れる。

「ライトセーバーでは、肌に傷をつけてしまう」
「今のところは僕の首を落とすしか方法がないですか」
オビ=ワンが元気よく言うと、クワイ=ガンもにやりと笑った。
「そうすればすぐ片がつくが、私はじっくりやるのも好きだ」

 クワイ=ガンはオビ=ワンにカラーの発信機を渡した。
「自分で持っていろ。バンドールに戻ってはずす方法を考えよう」
オビ=ワンの肩に手を掛けて、オフワールドの外に停まっていた乗物の方に急いだ。


 スピーダーでバンドールに向かいながら、農場やホームプラネット鉱産と連絡を取った。あの黒い箱は農場、鉱山、海底鉱山といたるところにあった。
「おそらくは遠隔操作の可能な爆弾」
「それができるのはザナトスですね」
クワイ=ガンは肯いた。

「惑星の主要場所に爆弾をおいて、いずれ要求を突きつけるつもりだったんだろう」
「一刻も早く、撤去しなくては」
「ああ、だがすでにザナトスには私達がオフワールドでした事を知っているだろう。どう出るかな」

 オビ=ワンは一見穏やかに言ったクワイ=ガンの表情を見て、その深い青い目にこれまでにない決意が込められているのを見て取った。憎しみや怒りではない、戦いを目前にしてフォースを纏い、静かに己に集中している戦士の姿があった。この人はジェダイで戦士なのだ。オビ=ワンは感嘆の目で大きな男の毅然とした横顔を見上げた。

「緊張しているか?」
ふいに、クワイ=ガンがオビ=ワンを見てやさしく言った。
「い、いいえ」
オビ=ワンはあわてて言った。
「僕は、大丈夫です。あなたと一緒に戦います」
「そうか」
クワイ=ガンはオビ=ワンを見て一瞬眼を見張り、やがて又前方に視線を戻した。バンドールの街が荒野の向こうに見えてきた。



 夜が明けた。オビ=ワンは公邸の以前滞在した同じ部屋で目を覚ました。隣りのベッドで眠ったはずのクワイ=ガンの姿は既に無かった。夕べ、久しぶりに浴槽で身体を洗い、暖かい食事を摂ったオビ=ワンはすぐ眠りに付いた。
身支度して食堂にいくと、もう朝食を終えたらしいクワイ=ガンがいた。

「おはようございます。クワイ=ガン」
「おはよう。オビ=ワン。具合はどうだ?」
「もう、すっかり良くなりました」
オビ=ワンは元気に答えて、用意された朝食を食べ出した。


 食事をとる少年にジェダイはこれからの予定を話し出した。坑道の中にあったオフワールドの資材、わけてもあのOとCのマークのついた黒い箱を運び出す。周りに危険な物のない場所に運んで、中身を確かめ、――おそらくは爆薬、の起爆装置を無効にする。クワイ=ガンにもその作業は可能だが、すでに、この惑星の爆弾処理員にも依頼してあった。

 昨日オフ=ワールドを訪ねた後から、バンドールの統治者や鉱山の責任者と連絡を取り、あの黒い箱に誰も近づかないように、厳重に見張っておいた。

 食後、クワイ=ガンはオビ=ワンを伴なって、公邸を出た。ホームプラネット鉱産までは徒歩でいける距離にある。彼方に坑道の正面出入り口が見えた時、クワイ=ガンの足が止まった。オビ=ワンも不意に立ち止まった隣りの男を見上げる前に、いやな予感、というか、不穏なフォースの気配を感じて歩みを止める。

「向こうだ!」
クワイ=ガンが叫ぶ間も無く、ブラスターの弾丸が襲った。とっさに見を伏せ、かわした二人に尚も銃弾が浴びせられる。クワイ=ガンは街路灯の影で身をかわしながら、すでにライトセーバーを起動させていた。一瞬の銃弾の間をつき、ライトセーバーを構えて、次の弾丸を偏光させる。オビ=ワンも続いてライトセーバーを起動させた。

 二人が銃弾をかわし始めたのがわかったのが、銃声が途切れる。二人が見たその方向には、予想通り、ブラスターを構えた黒いローブ姿の青年がいた。

 クワイ=ガンがセーバーを下に向け、ザナトスを見る。ザナトスもクワイ=ガンを見返す。が次の瞬間、再び銃声が飛んできた。

 クワイ=ガンが身体を低くして建物の影に隠れながら、オビ=ワンに言う。
「ザナトスは話をする気分じゃなさそうだ。正面の坑道は無理だが向こうの別の入口から中にはいるぞ」
オビ=ワンも銃弾をかわしながら肯いた。

 クワイ=ガンの合図で二人は走った。少し先のその場所にたどり着くまでも、時おり銃弾が飛んでくる。ザナトスが二人を追っているのがわかる。

 建物の入口に駆け込んだ二人は、通路を走り抜けリフトを目指した。従業員達はすでに復旧作業に付いており、作業用のドロイドの他は人影も無い。

 行く先を例の黒い箱のあったフロアに指定し、リフトが動き出した時、我知らず一息ついたクワイ=ガンは、次の瞬間、背筋まで凍るようなぞっとした思いに囚われた。自分達はまんまと、待ち受けたザナトスに追い詰められたのか。そして、行く先は既に決められていた。

 クワイ=ガンは先日いった復旧された坑道を目指していた。オビ=ワンに手短に貴重なイオナイトが発見された事を話す。オフ=ワールドには隠しているが、復旧支援としてあの資材を運び込んだ事を見ると、ザナトスには既に知られたかもしれない。

 例の場所にたどり着いたクワイ=ガンは眉をひそめた。確かにあった黒い箱が見当たらない。他の資材はそのままだった。昨晩鉱山の管理者と連絡した際は、前の通りと言っていたし、自分が行くまでは絶対厳重に見張ると請合ってくれた。


 「こうまで思い通りにしてくれるとはね。あなたもやきがまわったもんだ。クワイ=ガン」
ふいに、二人の背後から声がした。振り向くと、赤い刃を煌めかせたライトセーバーを構えたザナトスが嘲るような声で言った。

 ザナトスは足音もさせず、不意に、ふわりと現れた。二人が通ってきた見通しのいい坑道を追って来たのならわからぬはずが無い。
クワイ=ガンは目を細め、目の前で嘲笑しながら立っている青年を見つめた。

「別の坑道を作ったのか?」
ザナトスは一瞬息を呑み、肯いた。
「さすが、そこまでは気が回ると見える。仮にもジェダイナイトですか。あんたの側のその役立たずの坊やと違ってね」
「僕が役立たずだって!」

 オビ=ワンは考える間も無く、猛然と掛かっていった。刃を構えて待ち受けるザナトスに向かい、正面から切り込まずに、一息間をおいて身を屈め、足元にフォースを集める。次いで壁を蹴り、反動でさらに高く飛んでライトセーバーを掲げ、ザナトスに振り下ろした。

 思わぬ方向から繰り出された攻撃に、ザナトスの防御が一瞬遅れる。辛うじてセーバの柄の端で防いだ為、金属のぶつかる鈍い衝撃音が坑道に響いた。

 オビ=ワンは体制を立て直し、再びライトセーバーを構えてザナトスを睨みつけた。
「僕を役立たずなんていわせない!」
ザナトスは憎しみを込めた眼で少年を睨むと、容赦なく刃を繰り出した。鋭い攻撃にオビ=ワンが辛うじて身をかわす。

 クワイ=ガンはオビ=ワンに向けられたザナトスの刃を己の刃で受け止めた。もと師弟は共に両手でライトセーバーを構え、力を込めて相手の刃を受け止めた。互いに力ではゆずらず、がっちりと組み合って動きが止まる。赤と緑の火花が飛び散り、セーバーの擦れる鈍い音が響き、坑内に煙が満ちた。

 が、僅かの差の力に押され、元弟子はジリジリと後退した。そして、刃の角度を横に向けると、急に後退して、クワイ=ガンから離れた。クワイ=ガンも一派後退して相手の様子を伺う。

 ザナトスは不敵な笑みを浮かべると言い放った。
「あなた達を殺し、ついでにこの惑星も破壊してやる」
壁に手を掛けると、壁面とまったく見分けがつかない扉が開いた。ザナトスはローブをひるがえし、アッという間に姿を消した。


続く
                                                           

  ジェダイは決してあきらめない、と言ったのは誰でしたっけ。マスターもだけど、元、ジェダイパダワンだったザナトスもしつこい。

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