Jewelry

 コンサルトでも指折りの富豪の未亡人が亡くなり、遺言によってジェダイテンプルに財産の一部が送られることになった。が、これは清廉、質素をモットーとするジェダイにとっては余計な混乱を招くことになった。

 有数の宝石コレクターであった夫人が残したものは、おびただしい数の宝飾品であった。普通の女性、いや誰でも喜ぶ高価な宝石は、装飾品を一切身に付けないジェダイにとっては、不要なものであった。ジェダイ評議会は宝飾品の使途を協議した。

 テンプルの財産として保管する。売って、テンプルの経費に当てる。恵まれない人々に寄付する。などの意見が出たが、結論には至らなかった。そこで、マスター・ヨーダの提案により、全てのジェダイから意見を募ることにした。

 通知の後、宝石は、実物の使い道を考案する参考として、テンプルの1室に展示された。
装飾以外の、実用的目的に使う斬新なアイディアを広く求めたのである。採用された意見には、実用に使う場合はその宝石を、さもなければ、特別休暇が与えられることになった。


 クワイ=ガンとオビ=ワンは宝石を見に行った後、部屋でお茶を飲んでいた。
「―きれい、でしたね」
「ああ、見事なものだった」
「でもあんなにたくさん、どうやって一人で身に付けたのですか。重そうですね」
およそ、宝石について何も知らないオビ=ワンが疑問を口にする。
「パダワン、普通一度に全部身につけたりはしない。取り替えて楽しむものだ」
「そうなんですか。いちいち取り替えるのも大変そうですが」
「たいていの女性は服と同じに宝石も替えて楽しむ」
弟子の、女性と宝石についての認識はあまりにも乏しいとクワイ=ガンは思った。

「どれも高価なものだそうですね」
「そうだな、ネックレス一つでも、小型の宇宙船が買える」
オビ=ワンが目を丸くする。
「どれぐらいの金額か想像できません!」
「シンプルなイヤリング片方でケーキ100個は買える」
「すごい…」
小遣い程度の金額しか知らない弟子の金銭感覚はちょっと問題かな、とクワイ=ガンは思った。

「まあ、宝石など元は天然の鉱物を磨いて細工したものだ。確かにきれいなものだが、実用品ではないし、嗜好品の様な物だ。人によって好みが全然違う」
「そんなものですか」
「装飾以外では、人と石との相性が合えば、フォースを集中するのに使えそうだ。御守りになる」
「私がマスターからいただいた石のようにですか?」
「あれはただの石だが、まあ、似た様な物か」
「私にとってはどんな宝石にも勝るものです」
弟子の言葉にクワイ=ガンの頬が緩む。

「私の好みで言えば、あの中で気に入ったのは、オパールだな。ケースの右の方にチェーンがついただけの、シンプルなデザインのペンダントがあったろう」
オビ=ワンが頷く。
「オパールは光の具合によって、虹のように色が変化する石だが、産地によって基本の色が違う。あのペンダントのオパールの色は青と緑に変わる。ちょうど天候により湖の水面が変わるように」
クワイ=ガンはオビ=ワンを見つめる。
「ちょうど、お前の瞳の色のようだ」
師の言葉にオビ=ワンはどぎまぎして、口ごもってしまう。

「―ええと、私は、その、指輪についた青い石がいいと思いました」
「青い石?」
「指輪の中に、水色より濃い青の、輝く宝石がついた物がありましたね」
「あれは、サファイヤだろう」
「サファイヤというのですか。すごくきれいな青で…」
照れたように口にする。
「海の色に似た、マスターの瞳と同じ色でした」
「オビ=ワン」
ソファに腰掛けたクワイ=ガンは、オビ=ワンを目でこちらへと促す。

「確かに宝石は人によって好みが違うな。自分で持ちたいか?」
師の前に来たオビ=ワンは、クワイ=ガンの脚の間に立ち、ソファに浅く立て膝をついた。
「いいえ」
上から少し見下ろすように師の肩に手を掛ける。
「そうだな。お互い、身近に自分の宝石を持っているからな」
オビ=ワンの顔を両手で挟んで目を見ながら引き寄せる。
「マスター、こんな近くで見られると…」
「では残念ながらキスのときだけは目を閉じよう」
優しい口づけは、そのまま長くなった。

 ややあって、やっと唇を開放されたオビ=ワンは空気を求めて息を吐いた。
「ところでパダワン」
口元に笑みを称えてクワイ=ガンが耳元で囁いた。
「少し女性と宝石、それに宝石の金銭価値について学んだほうがいいな」


 評議会はジェダイから集まった意見をまとめた。
女性ジェダイからは、自分のフォースを集中させるのに、相性がいい宝石を見に付けたいと言う希望が多かった。しかし何故か、クリスタルなどより、ダイヤモンド、ルビー、エメラルドなどの派手な宝石が目立った。

男性よりは、任務に持参し、辺境の通貨のきかない惑星で使いたいという希望があり、ゴールドや小粒の宝石の申し出が多かった。もちろん、個人で使うよりは、寄付という意見が多数を占めた。

 その中で目を引いたのは、元老院や代議員、その夫人の装飾品の好みを列挙し、宝石を有効活用すれば、ジェダイテンプルと良好な関係が保てるというものだった。―提案者はクワイ=ガン・ジン。

 もう一つは、自分が任務で訪れた惑星の恵まれない人々を列挙し、宝石を換金した金額で、具体的に何を支援すれば助かるか書いてあった。―提案者はオビ=ワン・ケノビ。

 十二人の評議員はこれを見て互いの顔を見渡す。いったい、この師弟は―。
「マスター・ヨーダ、如何されますか?」
「具体的な提案のほうが、いいじゃろう。もとよりジェダイに宝石は不要なものじゃ」
皆、依存はなかった。

 「と、いうことで、お前達に特別休暇が与えられることになった」
宇宙船のモニターに移るメイス・ウィンドゥの言葉を聞いてクワイ=ガンは鷹揚に頷く。
パダワンは傍らでうれしそうに微笑んでいる。
「お前達はちょうど任務を終えたところだから、このまま休暇をとってもかまわない。何処か行きたい場所でもあるか?」
「そうだな」
クワイ=ガンがオビ=ワンの方を見ながら言う。
「海のあるところか、きれいな湖のある惑星にでも行くか」
「いいですね」
オパール色の瞳を輝かせながらオビ=ワンは相槌を打った。



End



タイトルは"君の瞳に恋してる"にしようかと思ったのですが、簡潔に。
師弟の容貌や瞳の色は役者さんからきておるんですが、マスターは濃い青、深みがあってとても素敵! オビは"ムーランルージュ"のとき一生懸命見たんですが、多かったのは明るいグレーかな?でもブルーやグリーンがかったりするみたい。う〜ん。腐女子泣かせ!(ちがうでしょ!)ということで、少しお馬鹿なオビ。裏情報に通じていそうなマスターでした。

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