Colors | ― いろいろ…… ― | |
クワイ=ガンとオビ=ワンの師弟が食堂に入っていくと、いち早くフォースを察したらしく、それまでイース・コスと話していたプロ・クーンが振り向いた。遠くから黒いローブをひるがえし、真直ぐにこちらへ向かってくる。その後を、戸惑った様子でイース・コスも追ってくる。 「クワイ=ガン、聞きたいことがある。すぐ済む」 「せわしないやつだな。私達は腹をすかしてきたんだぞ」 クワイ=ガンは、2人の評議員に遠慮して席を離れようとするオビ=ワンに、そのままと手振りで制し、椅子にかけた。 「すまない、クワイ=ガン。プロ。後でもいいんじゃないか?」 追いついたイース・コスが遠慮がちに詫びた。 「私はこのあと用事があるんだ。早くはっきりさせておこう」 「しかし……」 「どっちでもいいが、すぐ済む話なら早くしてくれ」 「お前、最近メイスのライトセーバーを見たか?」 「――無くした様子はないぞ。先日は確かに持っていたな」 「いや、抜いた光刃を見たかということなんだ」 イースがあわてて正す。 「メイスのセーバー?そういえば、暫くおぼえが無いな。お前はどうだ?オビ=ワン」 「私も、最近は覚えがありません。マスター・ウィンドゥは訓練は担当しておられませんから」 「そうか、では仕方がない。お前ならわかるかと思ったが」 「メイス本人に聞けばすむだろう」 「一昨日から出掛けているんだ」 「そういえば衛星に視察にいくといっていたな。デパもいっしょに。急ぐ話なのか」 イース・コスの眉が、一瞬寂しそうにひそめられ、小さな声で答える。 「本当に大した事じゃないんだ。昨日、私がライトセーバーの手入れをしてて気付いたんだがね」 イース・コスはベルトに吊るした自分のセーバーを持ち上げた。 「これは以前メイスと交換した物なんだが」 プロ・クーンとクワイ=ガンが肯く。が、初めて耳にする話にオビ=ワンは驚く 「光刃の色が以前と微妙に違うような気がするんだ。持ち手によって、変化することもあるかもしれないと思ってね。プロに会ったから聞いたんだよ」 「――メイスの色は紫だったな。お前のは」 「緑色だけど、以前はもっと青がかっていたような気がする」 「イース、メイスが帰るまで待つしかないようだ。邪魔したな。2人とも」 プロ・クーンは足早に去っていた。 「忙しいやつだな」 「いや、用事のあるプロを引き止めたのは私なんだ。すまなかったね。オビ=ワン。ゆっくりマスターと食事してくれ」 「イース」 静かに去ろうとするイース・コスをクワイ=ガンが呼び止める。 「そういえば、メイスが帰ったら聞きたいことがあると言っていたな。連絡がきたらお前のことを話しておこうか」 「できたらでいいよ。ありがとう」 イース・コスは嬉しそうに礼を言い、これからベアクランの瞑想の訓練だと去っていった。 師弟は食事を始めた。 「あの2人がライトセーバーを交換したなんて、初めて聞きました」 「あいつらは、昔から仲がいいし、趣味も合うらしい」 「趣味?」 あら、と華やかな声がし、アディ・ガリアとパダワンのシーリーが近づいて来た。 「隣に座っていいかしら。クワイ=ガン」 オビ=ワンは素早く立ち上がって、アディ・ガリアの為に椅子を引く。美貌の評議員はオビ=ワンににっこりと笑いかけ、優雅な仕種で腰を下ろす。次いでオビ=ワンはトレーを持って立っている彼女のパダワンの椅子も引いてやった。シーリーはマスターのように優雅に、とはいかなかったが、礼を言い、すました顔で椅子にすわった。 「しばらく見なかったわね」 「3日前に戻って来たばかりだ」 「じゃあ、あの事は聞いてるかしら――」 「ハイ、オビ=ワン」 「久しぶりだね。シーリー」 2組の師弟はそれぞれに話していたが、ふいにアディ・ガリアが弟子に呼びかけた。 「メイスのセーバー?いいえ、見てないわ。ねぇ、シーリー」 「何ですか。マスター」 「あなた、最近メイス・ウィンドゥがライトセーバーを抜いたところを見た?」 「いいえ。ずっと前、偶々トレーニング中にいらして、助言してくださったとき見たくらいです。私のライトセーバーと似た色だったので覚えています」 「そうねぇ。あなたのは明るい紫色だけど、メイスのはもっと深い紫だったわ」 「君はスカーレットレッドだったな」 アディ・ガリアが微笑んで肯く。 「そうよ。あなた達はグリーンとブルー。共同任務の時充分見せていただいたけど、最近ごぶさたね」 「シーリーと訓練はどうだ。パダワン」 答えかけたオビ=ワンをシーリーの声がさえぎる。 「明日の午後空いてるから、部屋の予約がとれたら時間を知らせる。いい、オビ=ワン?」 「――ああ、わかった……」 2人は食事を終え、住いに戻った。 「うかない顔だな」 にやにやと見下ろしてくる師の顔を軽く睨みながら、弟子は答えた。 「別に何でもないですよ。時間の都合はつけられますしね」 「前は彼女に押されっぱなしだったがな」 「昔の事を持ち出さないで下さい。最近は持久戦に持ち込めば、私のほうが分がいいですよ。それに、女性には足を使いませんからね」 クワイ=ガンの通信機が鳴った。 「メイス、いつ戻って来たんだ?惑星ドランの基地の見取り図、ああ、持っている。いや、いい。私もお前に用があるし、これから行く」 メイス・ウィンドゥの住いに出向いた師弟は、入口で出迎えられた。 「クワイ=ガン、わざわざすまんな。オビ=ワンも掛けてくれ。しかし、お前からくるとは何の用だ?」 「そう警戒しなくても、すぐ済む。これが、基地の見取り図のメモリーチップだ」 「助かる。今、茶を入れよう」 「メイス、4人分入れてくれんか」 「4人」 「イースを呼んだ。ああ、今きたところだ」 クワイ=ガンの言葉とおり、イース・コスが扉を開け、静かに姿を現した。 「入ってもいいかな」 「勿論」 「お帰り。――デパも一緒だったのかい」 「あれは方向が同じなので行きは一緒だったが、仕事は別々だ。長引いてるようなので、私が一足先に帰ってきた。そう留守にできんしな」 「そうか」 イース・コスがうれしそうな表情でクワイ=ガンを見た。 「クワイ=ガン、先に君達の話をしてくれ」 「こちらは済んだ。メイス、イースが話があるそうだ」 メイス・ウィンドゥはイース・コスの話を聞くと、そんなことか、と腰のライトセーバーを取り上げた。 「最近、人前で抜いた事は無いが」 椅子から立ち、部屋の中央で軽くセーバーを構え、起動させた。 輝く刃が立ち上がる。 見ていた3人はそれをみて目を見張った。 「これは――」 「メイス!」 「ゴ、ゴールド!!」 それは、まばゆい金色の光をはなっていた。 「……違った」 「は?」 「すまない。間違えた」 メイス・ウィンドゥは呟くとすぐに刃を戻し、唖然とする3人に背をむけ、隣の部屋へ入っていった。間も無く、腕にいくつものケースをかかえて戻って来た。 「ええと、ああ、これだ。グリップのデザインはどうしても慣れた形にするから。私としたことが。この前手入れしたときに、うっかり取り違えてしまった」 メイス・ウィンドゥは、ケースから先ほどとよく似たセーバーを取り出し、起動させた。 今度は、まぎれもなく、見覚えのある紫色の光が立上った。 イース・コスが大きく息を吐いた。 クワイ=ガンは先ほどのゴールドのセーバーを手にとり、興味深そうに触りだした。 「おどろかさないでくれ。なんだ、この色は?」 「珍しい鉱石があったんで、試に作ってみたんだが、どうもいまいちだ。実戦にはつかえんな」 「ゴールドなど、聞いた事がない。黄色ならともかく……」 クワイ=ガンが口の中でぶつぶつ言う。 オビ=ワンも興味津々で師の手元を覗き込んだ。 そんな2人に目もくれず、イース・コスはうっとりと紫のライトセーバーを眺めている。 「あいかわらず、美しい耀きだ。メイス」 「使い込んでよく馴染むと、フォースと同化して微妙に偏光するようだ」 「――そうだったのか」 「むしろいい事だ。イース」 「メイス」 クワイ=ガンが軽く咳払いして立ち上がった。 「さて、私達は帰るぞ。邪魔したな」 「すまなかったな」 「ありがとう。クワイ=ガン」 部屋を辞して住いに戻る途中、オビ=ワンが師に尋ねる。 「マスター・ウィンドゥがライトセーバーをコレクションしていたなんて、ご存知だったのですか?」 「何本か持ってるのはわかっていたがな。イースもだし、プロもそうだ」 「そうなんですか」 「ジェダイのたしなみとか言っているが、集めるのが好きなんだろう」 「マスターは一本きりですしね」 オビ=ワンはくすくす笑った。 師弟が部屋に戻ると、クワイ=ガンが声を掛けた。 「お前のセーバーのグリップだがな。まれに袖口に引っ掛けることがあるだろう」 「え?あー、そう言えば、構えたときじゃなくて、回すときにちょっと」 「グリップを改良したほうがよくないか」 「あれは訓練中の癖なので、本当に戦ってるときはやりません」 「いや、無意識にやっているな」 「そうですか」 「少しでも気になったら直したほうがいい。マスター・ドゥークゥーはついにグリップにカーブをつけたからな」 「ええっ!!」 「さっそくやろう」 「って、マスター。もう寝る時間ですよ。明日の講義の準備もあるし」 「何をいってる。ライトセーバーはジェダイの命だ。時間など気にしていられるか」 「もう〜、マスターだって1本きりだって言いながら、直しまくっているじゃないですか。人のこといえませんよ」 「そうとも、私は浮気はしないが、気に入ったものは、とことん自分好みにカスタマイズする主義だからな。ライトセーバー、宇宙船、パダワン――」 「マスター、それって……」 「ん、どうした?オビ=ワン」 「い、いえ、何でもありません」 弟子は少し顔を赤らめながら、師に自分の唯一のライトセーバーを差し出した。 End |
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