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コルサントを訪れていた惑星サクソニアの王女ソリスが行方不明と知って大使館に駆けつけたクワイ=ガンとオビ=ワンは、宝冠の紛失を苦にしたせいではないかと聞かされて、引っかかるものを感じた。 サクソニアは長い歴史を誇る中規模の惑星。資源にはさほど恵まれないが優れた芸術や美術工芸品で定評がある。先ごろ、サクソニアの優れた文化や美術工芸品を紹介する展示会がコルサントで大々的に開催され、始めて惑星の外で披露された宝物の数々が大評判となった。当然、警備も厳重をきわめ、ジェダイも期間中交代で派遣されていた。 それが無事終了したのは一昨日、ジェダイは主催者と王女に熱い感謝とねぎらいを送られ任務は終了した。あとは厳重に梱包して、専用機に搬入するだけ、という時になって事件は起こった。呼び物のひとつだった宝石をちりばめた見事な宝冠が見当たらなくなっていた。 セキュリティカメラに、何者か侵入した影が映っていたが、顔や姿勢はわからなかった。国王の名代として展示会の代表を務めた王女は傍目にも驚くほど悲嘆にくれ、サクソニアに帰れない、一人にして欲しいと言って閉じこもったまま、翌朝には姿が見えなくなっていたのだという。身の回り品はすべて残されていた。 「王女の失踪は色々な可能性があるし、宝冠の紛失もはっきり盗まれたか断言できん」 「とにかく、宝冠が消え、次の日に王女も消えてしまったんですね。――実は、気になる人物がいるんですが、マスター」 巨大惑星コルサント、数十億の雑多な人種の居住地区は幾重もの複雑な階層に分かれている。その中層と下層のちょうど中間のあたりに、他惑星からの移民が星系ごとのコミュニティを成す地区がある その一角、サクソニアが属する星系のコミュニティに小さな教会がある。不夜城コルサントでも夜遅いこの時刻、周辺は静まりかえっている。 長身のジェダイよりやや高いぐらいの教会の扉が固く閉まっているのを確かめ、クワイ=ガンが手をかざすと僅かな音とともに錠がはずれ、師弟は静かに扉を押して中に入った。 こぢんまりした教会の内部は中央に小さな祭壇があり、司祭らしい服装の白髪の男と、白いローブをまとった黒髪の若い男。さらにもう一人、たった今男が手をかけてフードを外そうとしていた向かい合って立つ同じローブ姿の人物が一斉に振り向いた。 クワイ=ガンとオビ=ワンが近づくと、青年は、もう一人のフードをかぶった小柄な人物を庇うようにとっさに前に立ちふさがった。 我々は、と足を止めたクワイ=ガンは穏やかに呼びかけた。 「惑星サクソニアのソリス王女を捜しています」 ハッとフードを被った頭があがる。その人物はフードを下ろしたまま、覚悟を決めたように顔を上げ一歩前へ踏み出した。 「王女!」 青年が止めようとする。 「大丈夫よ、カータ。私の知っているジェダイの方だわ」 「ジェダイだって!?」 ゆっくりとフードを外すと、カールした赤毛の若い女性が金色の瞳で師弟を見つめてきた。王女は一昨日まで美しい真っ直ぐな長い黒髪だったはず、見慣れない髪形にオビ=ワンは目を見張った。 「ご無事で何よりです、王女」 「マスター、クワイ=ガン・ジン、それにオビ=ワン」 「訳をうかがいましょう」 「わたし達は、駆け落ちしたのです」 弟子は一瞬、ポカンと口を半開きにしたが、師はいささかも動じない。 「なるほど」 「ジェダイは平和と正義を司る役目のはず。私達は不正を犯したわけではありません。よくよく考えてこうしたのです」 クワイ=ガンは肯き、身振りで先を促す。司祭がどうやら危険はないと見て進み出、皆に椅子を進めた。 「彼はカータ。私達が初めてあったのは13年前、王家の夏の別荘で森番の子のカータが手伝いに来ていた時です」 王女は14、少年は9つだった。 身代金目的で王女誘拐を企んだ者たちを見つけ、とっさの機転で王女を救ったカータはお礼に望みを聞かれ、学問をしたいと願い出た。 時が流れ、国立の士官学校を卒業して王室付に任命された青年と王女は10年ぶりに再会した。 カータも言葉少なに話し出した。 「話す事も近くによる事も叶わず、ただ、遠くで姿を見かけるだけで浮き立つほど嬉しかった」 「私も同じでした。そのうち彼が侍女を通じて王宮の庭の植物がどこが見頃か伝えてくれるようになり、私が行くと彼もその警備をするようになり、二人きりになれることは無かったけれどとても素晴らしい時を過ごしました。それが1年ほどして彼が他に転属になりました」 「自分から願い出たんです。卑しい生れの自分が王女に目を掛けられていると噂になっていましたから、迷惑をかけたくなかった」 二人のプラトニックな純愛はそこで終わるはずだった。 王女が若い士官と何かあったという噂を信じ込んだ熱心な皇室信奉者が、配置換えになった先で任務中のカータを襲った。 ソリス王女の金色の瞳が悲しみに曇った。 「カータは幸い軽傷でしたが、一緒にいた同僚は重傷を負いました。私は、――私はあの時わかったのです。カータが死んだら、生きていられないと」 密かにカータを訪ねたソリスは想いを打ち明け、互いに深く愛し合っていることを知った。今この恋をあきらめれば、一生後悔する。王女が身分も捨てることも、二人が晴れて結婚する事も現状では不可能。けれど妙齢の王女がいつまでも独身を通すことは困難。悩んだ末、恋人達は決心した。 「私たちは時期を待ちました。コルサントでサクソニア展があると聞いたときから、2年がかりで計画を立てました」 「2年!?」 「ええ、希望がありましたから、その間ほとんど逢えなくとも耐えられました」 「すべて計画通りに進んだということですな。宝冠の紛失も?」 「ええ、あれは安全な場所に隠してあります」 小さな声で打ち明けた王女にカータの声がかぶさる 「計画したのは私です!」 「実行犯は私、というよりは私の忠実なドロイドだけど」 「では、宝冠の紛失を苦にして、発作的に失踪したというのは――」 「身を隠すための口実ですわ」 「けれど、何故ここがわかったんですか?ジェダイは人の心が読めるんですか?」 クワイ=ガンは弟子を見た。 「偶然です」 オビ=ワンが師とともに警備を頼まれてアーカイブで資料を探した時、王室一家の最近の映像で、いつも王女を見つめている若い士官に気づいた。彼はきっと王女にとても好意を持っているのだろう、とその時は思っただけだった。 が、展示会の最終日、王女が無事警備を終えたジェダイをねぎらった際、人々に混じって見覚えのある顔を見かけた。 カーサは半年前願い出て軍隊を辞め、コルサントに来ていた。正規の手続きを踏んでコルサントに滞在していたので、調べればすぐわかった。カータはコルサントの大学に入学して学生となっていた。急ぎ師弟はカータを尋ねたが留守だった。聞き込みを続けると、カータは熱心に教会に行っていると言う。さっそくコミュニティにある教会を目指した。 「サクソニアの月が満月の夜、司祭の立会いで誓いをすれば、絶対的な効力を持つ。結婚を誓えば、王といえど反対は出来ない」 クワイ=ガンの言葉に、司祭が肯く。 「司祭様は王女をご存知だったのですか?」 オビ=ワンに問いに白髪の司祭は手を振った。 「いやいや、前からこの青年にサクソニアから恋人が来たら結婚すると頼まれただけじゃ。首を長くして待ったかいがあったようじゃな」 「――ということだ、パダワン」 「イエス、マスター。評議会にはどう報告します」 クワイ=ガンは顎をさすった。 「そうだな。任務は一昨日で終了したので、これは私的な捜査だ。宝冠は、再度すみずみまで捜せば見つかるはずだ。そうでしょう、王女?」 「ええ、多分、絨毯あたりに紛れこんだのですわ」 王女がすまして答える。 「コルサントは銀河中から莫大な人が集まってくる。間違って下層にでも入り込んだら生死もわからない、王侯貴族といえども。それとも――」 クワイ=ガンは髪も扮装も一変した王女を見つめた。 「すっかり変えたようだが、何か以前身につけていたものをお持ちか?例えば、池の底から見つかっても持ち主がわかるような」 目を見開いたソリスはクワイ=ガンの意を悟って言った。 「処分しようと思っていた服で、直前まで着ていた紋章の刺繍入りのショールがあります」 「預かりましょう」 受取ったクワイ=ガンはそれを丁寧に仕舞った。 「紛失した宝は見つかるだろうが、捜し人は見つけられなかった」 「感謝します」 「では」 礼をして弟子と共に踵を返しかけたジェダイに声が掛かった。 「――待ってください」 振り向いた師弟に、何事かソリスに囁かれたカータが言った。 「私たちの結婚の立会人をお願いできませんか?」 サクソニアの結婚式で立会人は特別な意味がある。結婚する二人の前に、立会人の二人が身代わりとなって司祭の前に出る。そうすれば、仮に反対する者や邪気がやってきても、新郎新婦は無事という言い伝えがある。とどこおりなく式が済んだら、最後に立会人も共に祝福を受ける。立会人の資格は夫婦に匹敵する親密な間柄の二人。通常は親族から一組の夫婦がつとめる事が多い。 「ジェダイの師弟の絆は特別だとうかがいました」 こう言われては、引き受けざるを得ない。 では、とカータとソリスはまとっていた純白のローブを脱いで師弟に差し出した。 「身代わりとなる立会人が此れを着る慣わしです」 それは本当にピュアホワイトというに相応しい、サクソニアの優れた織物技術を駆使した柔らかで光沢のある素晴らしいローブだった。女性用のローブの丈はとても長く、裾は床を引いていた。 「身一つで出てきたけれど、これだけは用意しました」 オビ=ワンに着せ掛けながら、花嫁はそっと囁いた。 「とてもよく似合うわ、オビ=ワン」 布地はすらりとしたオビ=ワンの身体を流れるように覆い、動きに連れ美しいドレープを描いて揺れる。 隣りでカータのローブをややきゅうくつそうに着たクワイ=ガンが弟子に目をやった。 「純白のジェダイ、か。なかなか似合うぞ」 照れる弟子をクワイ=ガンはからかった。 「儀式用にその色で一枚作っておこうか、パダワン」 「いりません!」 皆の笑い声が重なる。 緊張も溶け、司祭の導きで、中断されていた式は再開された。 まず、白いローブをまといフードを下ろしたままの師弟が、新郎新婦と同じように絨毯を踏んで祭壇に近づく。ジェダイはどの宗教も信奉しないが、信仰には敬意を払っている。祭壇の前に並んで立つと、おのずから敬けんな気持ちが沸きあがる。 司祭に導かれるまま向き合い、まずクワイ=ガンが自分のフードをはずし、次いで手を伸ばしてオビ=ワンのフードを外した。目を合わせ、優しい笑みを交わす。クワイ=ガンは指を伸ばし、後ろに垂れた弟子の長いブレイドを大事そうに引き出してやった。それは時間にすればほんの一瞬。そうして次の指示通り、 立会人は振り返って結婚する二人を待つ。 黒髪でとび色の瞳の長身の花婿は、長い黒髪を切り落とし赤毛に染めてカールさせた花嫁の手をとって、ゆっくりと祭壇に向うカーペットを歩いてくる。服装は二人ともコルサントの一般的な装い。けれど、頬を紅潮させ金色の瞳を輝かせた花嫁は、つい先日までのどんな着飾った王女より美しいとオビ=ワンは思った。花婿もクワイ=ガンも同じように思っているに違いない。 祈りの後二人が結婚の誓いを述べ、司祭は厳かに新しい夫婦の誕生を宣言した。二人は向きを変え感無量の笑顔で見つめ合った。カータは背をかがめ、小鳥にでも触れるように、とても注意深く、一瞬だけ瞼を伏せたソリスに口づけた。 最後に司祭が立会いの二人にも祝福を与え、式は済んだ。 クワイ=ガンは自分のローブに着替えながら、二人に申し出た。 「よければ送っていこう」 「ありがとうございます。でもご迷惑では」 「いや、どうせ私達も帰るからついでだ」 再び白いローブをまとい、深くフードを下ろした二人はジェダイの後について教会から出た。と、扉のステップにソリスがつまずいて倒れかけ、とっさにカータが両手で支える。アッと小さな声が漏れる。 先にいた師弟が振り返ると、新妻はいっそう深くうつむき、花婿は困ったような表情であらぬ方を向いていた。ソリスの顔が赤く染まっている。 「オビ=ワン」 「はい」 「ご婦人をエスコートして乗り物まで連れて行ってくれ。私は念の為周辺を確かめてくる」 やがて、クワイ=ガンとカータが乗り込み、オビ=ワンの運転でスピーダーは夜の街に浮かび上がった。交通量の少ないルートを選んでカータの住まいに辿りついた。銀河中から学生が集まる大規模な大学は、学問の自由を保障され、家族が住める住居も整備されている。これなら、二人は静かで安全な生活を送れるだろう。二人に篤く感謝され、師弟はそこを後にした。 「もう1ヶ所寄り道してくれ。一行が滞在していた場所に近い人工池にショールを沈める」 「わかりました」 すべての用事を終え、二人がテンプルに帰りついたのは真夜中だった。 「眠くなければ、一杯呑まないか、オビ=ワン」 「いいですね。私もこのまま寝るには惜しいような気分です」 クワイ=ガンがワインを選び、オビ=ワンが軽いつまみを用意した。師弟はくつろいでソファにすわり、グラスを掲げる。 「何に乾杯します、マスター?」 「そうだな、新しい夫婦の誕生に」 軽くグラスを触れ合わせ、師弟は目を見交わして口許を上げる。 「駆け落ちの手助けをしましたが」 「おまけに高貴な女性を水に沈めてきた」 「平和と正義の守護たるジェダイの教えに反しませんか?」 「犯罪があったわけじゃなし。民事はジェダイの管轄外だ」 オビ=ワンは笑顔でグラスを口に運ぶ。 「いかにも王女然とした方でしたが、以外でしたね。よく思い切ったものです」 「障害が多いほど恋は燃え上がるもんだ。深窓の姫君ならなおさら一途に思い込む」 「そうなんですか」 「幸い、突っ走らずに慎重に事を運んだ。まあ、大丈夫だろう」 「私もそう思います。ところでマスター、あの時、カータに何ていったんですか?」 ん?とクワイ=ガンが弟子を見た。 「スピーダーで待っていた時、マスターが何か言ったら、彼、すごく感激した様に見えましたから」 「……知りたいか?」 そのクワイ=ガンの口調から受ける感じにオビ=ワンはためらい、僅かに身体を引いた。 「いえ、あの、おっしゃりたくなければ……」 「ねぎらいとエールだ」 「は?」 「つまずいたソリスをカータが支えた時、不自然と思わなかったか?」 「そういえば――」 「おそらく、手が胸元でもかすったとか、そんなところだ」 「それで?」 「二人の初心な様子からして、今まではせいぜい手を握るか軽いキスくらいだったろう」 「そんなもんですか?まあ、逢う機会も少なかったでしょうし」 「というより、カータは大した自制心だな。で余計なお世話だが一つアドバイスした」 「アドバイス……?」 「始めからうまくいかなくても、よく相手の様子をみて、あせらず注意深く進めれば、次第にうまくいくようになる」 「マッ、マスターッ!?」 「何か不適切か、パダワン?」 「――いえ」 「パートナーが深い喜びを得られたら、それがさらに自分の喜びになる」 「あの、そこまで……」 「結婚生活の心得」 「え?」 「何だと思ったんだ?」 「……知りません」 「お前も以前はずいぶんと初々しかったものだが」 クワイ=ガンがグラスを片手にソファに背を預けた。 「どうせ私は、正真正銘の処女の花嫁には及びもつきませんよ」 すねた口調のオビ=ワンを宥めるように、クワイ=ガンは金褐色のブレイドを手にとった。 「バージン・ロードか。それにふさわしい花嫁だった」 「そうですね、立会人になれて光栄でした」 「あの純白のローブはお前にとてもよく似合っていた」 「マスター……」 「お前が結婚するようだった」 「私とマスターが、ですか?」 「他に誰がいる?」 グラスをテーブルに置き、クワイ=ガンの手はオビ=ワンの腰を引き寄せ、もう一方の手は弟子のなめらかな顎の線をなぞる。 「では、式の後はどうします?」 師の耳朶に唇で触れながら誘うように弟子は囁く。 「そういうことは、私がリードするものだろう?」 ゆっくりとオビ=ワンの背をソファに倒しながら、クワイ=ガンの手がオビ=ワンのチュニックの合わせ目に掛かる。 「初夜ってここでするものですか、マスター?」 オビ=ワンの青緑の瞳が魅惑的に揺れて、クワイ=ガンの蒼い瞳を射る。 「そうだな……」 「―んっ」 口を塞がれたとたん、貪るように強く求められ、オビ=ワンがうめいた。 やっと息を開放された時、クワイ=ガンの唇は首筋から胸を這い、いつの間にかオビ=ワンの上半身の衣服もほとんど脱がされていた。 クワイ=ガンの前も大きくはだけ、押し付けられた腰のあたりにそれとわかる硬いものを布越しに感じる。 オビ=ワンは薄く目を閉じ、頭を反らして広い肩に回した手でクワイ=ガンの長い髪を掴んでいた。クワイ=ガンの舌が胸の蕾を転がす度、思わず喘ぎがもれるのこらえられない。 「ベッドに行こうか、マイラブ?」 「……意地悪」 「では、後で行こう」 「ええ、後で……」 腕の中の恋人が同意したので、クワイ=ガンはオビ=ワンのレギンスに手を掛けた。 End |
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