The Reunion    ※EP6後のLOJより

 彼が生きていると知ったときの驚きは大きかった。帝国のジェダイ狩り以降、オビ=ワンは砂漠に潜み、じっとルークの成長を見守る為だけに生きてきた。他の惑星に隠棲するヨーダと連絡することも、最近は他の生き残りのジェダイの消息を訊ねることもなく、只耐えて時期を待ってきた。

 それが、ナイトになる前にテンプルを去った、シーリーの弟子だったフェラス・オリンが危機にあるという噂を聞いてタトゥイーンを立ち、惑星ベラッサにやってきた。再会したフェラスはテンプルにいた時より世馴れてたくましい青年に成長していた。そして、彼の周囲と話すうちに親友のガレン・ムルンが生存していると聞かされたのだった。
 
 テンプルが襲われた時、オビ=ワンは宇宙中に飛び散っていたジェダイに身を隠せと信号を送った。だから自分とヨーダ以外にも生き残りがいる可能性を信じていた。けれど、伝え聞く話は優れたジェダイの訃報と、今も続く徹底したジェダイ抹殺指令だった。やがてオビ=ワンは己の心からジェダイ生存の可能性の希望を閉め出そうとした。希望を持たなければ、再び辛い現実と失望に向き合うこともない。

 そうしてオビ=ワンはフェラスに逢うまでは、ジェダイの生存の可能性は蜘蛛の糸よりももろい微かな一本の糸、それも帝国の重みにいまにも切れそうになりながらかろうじて繋がっているにすぎない、とさえ思うようになっていた。

 ガレンの生存を知ったとき、真っ先にいいようのない喜びが湧きあがってきた。幼馴染で親友で苦楽を共にしたあの男が生きている、生きていてくれた。が、次いですぐオビ=ワンを襲ったのは、はたして今も生きており、無事に逢えるかということだった。ガレンが身を隠した場所は検討がついた。一刻も早く駆付け、窮地にあるだろう彼を救い出したい。けれど、事はそう簡単ではなかった。

 フェラスから帝国軍の動向を知らされるうち、パドメの出産した場所を調べる者がいると聞かされ、どうしてもその秘密を守る必要があった。それをやれるのは自分しかいない。同様にガレンの捜索も一刻を争う。オビ=ワンはそれをフェラスに頼んだのだった。

そうして今、オビ=ワンは無事自分の仕事をやり終え、フェラスが苦心のすえ見い出して連れて来たガレンを乗ってきた宇宙船に収容することが出来た。


 オビ=ワンは船室の入り口に立ってカウチに上向きに横たわる親友を見ていた。見る影もなく痩せ衰えた身体、雪のような顔色に、オビ=ワンは胸がつぶれるよう思いがした。ジェダイナイト、ガレン・ムルンはオビ=ワンより背が高く、黒髪と鳶色の瞳の端整な面差しをしていた。何より、ジェダイ屈指の飛行士だった。フォースを頼りに曲芸のような超絶テクニックを駆使したアナキンと異なり、資質を認められ子供の時より正規の訓練を受けたガレンは、ほとんどの宇宙船の性能や空域を熟知し、飛行艇を駆使した大規模な空中戦の指揮に長けていた。

 パイロットスーツの下の筋肉は硬く引き締まり、精悍な顔立ち、きびきびとした動作、生き生きとした眼差し、ユーモアと機知に富んだ会話に時に皮肉もまざる。まさしくジェダイそのものだった。大人になってから逢う機会は減ったが、逢うといつも子供の時の様に遠慮ない仲に戻れるのだった。

 オビ=ワンは音もなく近づいた。ガレンの伸びた髪は藁のようにぼさぼさで顎にはうっすらと髭が伸びていた。伏せた瞼は貝殻の裏のように青白く細い血管が透けて見えた。肉がそげた高い鼻梁に続く形の良い唇は荒れ、微かに開かれた口から浅く呼吸する息に、確かに生きていることをうかがわせた。
 
 「ガレン……」
その呼びかけが聞こえたかどうか、重そうに感じられるほど長い睫毛を震わせ、閉じられていた瞼が開かれた。次いで宙を見ていた鳶瞳の焦点が次第に結ばれ、屈みこんだオビ=ワンの蒼い瞳を捕らえた。
「オビ=ワンだ。わかるか?」
「……」
「――何か欲しいものはあるか?」
鳶色の瞳に、一瞬かつてのようにユーモアがひらめいたのをオビ=ワンは見た。
「鏡だけはいらないな。お前の目を見てると、自分がどんなひどいかわかる」
力のないガレンの声はほとんど囁くようだった。
「それでも生きて息をしている、ガレン」
オビ=ワンは手を伸ばし、そっとガレンの黒髪に触れた。
「それだけで、どう感謝していいかわからない」
「お前も変わったな、オビ=ワン」
「ああ」
「少し老けたか、けど、瞳だけは元のままだ」

 ゆっくりと、ひと言ひと言をガレンは大儀そうにしゃべっていた。普通の者ならとっくに死んでいたところを、ガレンはぎりぎりまで体力を使い果たし、ジェダイがクリスタルを求めに来る洞窟で静かにフォースに還るのを待っていた。そこをフェラスが見つけ、追っ手を逃れて助け出したと聞いた。

 瞼を閉じ、浅く息をしたガレンは再び目を開いてオビ=ワンを目を合わせた。
「フェラスが来たとき、このままフォースと一体にならせてくれと言った。けど彼はお前と同じであきらめない。お前が迎えに戻ってくると聞かない」
「そうだ、私はあきらめが悪いんだ。覚えていてくれたようだな」
「実を言うと、今だって自分が生きてるか怪しいものだ。けど、お前がそういうんなら生きてるんだろう」
「きっと良くなる、ガレン」
「そうだな。――よく見つけ出してくれた、オビ=ワン」
ようやっと言いきると、ガレンは息をひとつし目を閉じた。
長話はひどく体力を消耗することは容易にわかる。

「ゆっくり休め、また後で話は出来る」
オビ=ワンは深く身を屈ませ、顔をガレンに近づけた。両手で親友の頬を包み込み、自分も目を閉じ、静かにガレンの額に自分の額を重ねた。あまりにも弱った身体に少しでも自分のフォースを送りたかった。
『……』
言葉はいらなかった。何よりもフォースがどれほどその身を案じているか雄弁に伝わる。冷たかった身体が、序々に微かな温もりを取り戻してきた。白蝋のような肌色は変わらないが、薄く瞼をとじ再び眠りに引き込まれていったガレンの表情は最初より安らかに見えた。
『よく休め、ガレン』
オビ=ワンは身体を離し、ガレンの肩までブランケットを引き上げ、ささやいた。肩に置いた手を通して、肉の落ちた硬い骨だけということが伝わってくる。

 ふいにオビ=ワンに万感の想いがこみ上げてきた。安堵と喜びと同時に二人が永久に失ったあまりに多くのもの、二度帰らない仲間、テンプル。オビ=ワンは目尻に感じた熱いものを指先でぬぐった。奇跡のように取り戻した愛する者の命を決して失ってはならない。
 

 船室を出、オビ=ワンはコックピットに向かった。心情的には側にいてガレンを介抱し、世話して回復させてやりたかった。けれどあの砂漠でそれは不可能だった。まして、自分はあそこをこれ以上離れられなかった。あらゆることを考慮して、慎重に行動せねばならない。


 コックピットではフェラスが操縦席の椅子を倒してもたれていたが、オビ=ワンに気づいて身体を起こそうとした。オビ=ワンはそれを手で制し、自分も隣の席に腰を下ろした。

「――よくガレンを見つけてくれた。礼を言う」
身体を起こしてオビ=ワンの視線を受けとめたフェラスは口元に小さく笑みを浮かべた。
「テンプルで見てたので知ってたんですよ。けど様子もだいぶ違って――」
オビ=ワンは静かに肯いた。
「このままフォースに還らせてくれと言ったんです。でもあなたの名を出したら態度が変わった」
「彼も私が生きているとは思わなかったんだろう」
「そうですね。だから言ったんです。あのあきらめの悪い人が死ぬはずないって」
にやりとするフェラスに応えてオビ=ワンも笑った。


 それから二人は今後のことを話し合った。
フェラスはガレンを秘密の基地に連れて行くという。オビ=ワンも知っているそこは絶好の隠れ場所で、信頼できる人がガレンの看病もしてくれそうだった。 
「ローンと暗号通信で連絡をとって必要品のリストを送ったんです。もう必要なものをどっさり詰め込んだ宇宙船が合流地点へ向かってます」

 ローンはフェラスがテンプルを離れて一般人となって惑星ベラッサで創設した会社の共同経営者だった。フェラスは実社会に出て自分の手で稼ぎ、さらには命を賭けても互いを信じられるパートナーを得ていた。

 フェラスとあの男は、性格は正反対だがかえってそこがいいのだろう、とオビ=ワンは思う。なるほど、今はともかく、ジェダイの弟子だった頃は生真面目で神経質だったフェラスの警戒心を解き、心から安心させてくれる包容力をローンに感じた。
そうして今は互いの為なら命を捨てても悔いない仲だ。

「君はいいパートナーを持ったな、ガレン」
「何です!?いきなり」
「どうやって知合ったか知らんが、テンプルを離れてパートナーが出来たのは素晴らしいことだ」
フェラスは不自然なほどうろたえた。
「知合ったきっかけってそんな特別じゃなし、パートナーったってあの、ビジネスだし」
口篭もって目さえ逸らそうとする青年に、年上の元ジェダイマスターは悪戯っぽい眼差しを向けた。
「もちろん、ビジネスは信頼が一番大切だ」
「あ、あいつは欠点もあるし完璧じゃないけど、信頼できる――」
オビ=ワンは年下の青年が可愛く思えてもう少しからかいたくなった。
「だから君達は相性がいいんだろうな」
「オビ=ワン!?」
とうとうフェラスは声をあげた。その端整な面差しの白い頬がうっすらと染まっている。

 オビ=ワンはこれ以上言わないというしるしに手を振り、それでも小さく笑って椅子に沈み込んだ。それきり口をつぐんだオビ=ワンに安心したのか、今度はフェラスが話題を持ち出してきた。

「ええと、シーリーからあなたが昔から優等生だったわけじゃないと聞いたことがあります」
「それは、彼女にしちゃずいぶん控え目な言い方だな」
「は?」
「初めて逢ったとき、シーリーは私を罵倒したんだ。私のせいでパダワンは皆マスターへの忠誠を疑われるとね。実際そういわれても仕方なかった。私はね、マスターの言い付けを聞かないでかってに任地に残った。つまりジェダイオーダーに逆らったんだ」
「まさか!?」
「同年代のジェダイなら誰でも知ってる。それからまあ、いろいろあって反省してマスターやカウンシルに謝罪して、許されて元に戻るにはずいぶんかかった」
「オビ=ワン、あなた案外手におえなかったんですね」
「おお、もちろん。君のような優等生には及びもつかない札付きだった」
「ひょっとして、アナキン以上ですか?」
ちくりとオビ=ワンの胸に痛みが走る。
「オーダーに逆らう大それた事に比べれば、あれが弟子の時にしたことは、いたずらみたいなもんだ」
「前から知ってれば、あなたへの見方もだいぶ違っていたでしょうね」
「おやどう思っていたんだ、当ててみようか?生真面目で融通の聞かない頑固者。シーリーがどうしてあんな面白味の無いやつと友人なのかわからなかったんじゃないか」
「降参です、マスター・ケノービ」
フェラスは手を上げる仕草をした。生粋のジェダイと思っていたオビ=ワンはどう
も奥が深そうだ。自分はこれまで一面した見てこなかった。

「ガレンとは昔からの友人で、一緒に遊んだりしたんですか?」
「もちろん、大人になってはめったに逢えなくなったが、飲みにもいった」
「どっちが強いんですか?」
「さあ、どっちだと思う?」
「シーリーとも飲みにいった入ったと聞かないのであなたは弱いと思ってましたよ」
「反対だ」
「え?」
「誰も相手にならなくてね、かろうじてガレンとは飲めるくらいだったが、私の方が強かった」
「……彼に確かめてもいいですか?」
「ああ、どうせ私の事を笊かうわばみだと言うさ」
「そういえば、あなたの元マスターもかなりと聞いた覚えが――」
「ジェダイとしてはかなり型破りだった。私はその師にいろいろ仕込まれたから」
その先は推して知るべし、という含みに納得してフェラスは肯いた。

 再会してからのオビ=ワンはいろいろ謎めいたところがあり、決して肝心な事は明かさなかった。君を信頼していないわけではない。けれど、知らないほうが良いこともあるのだ。そう言ったオビ=ワンの言葉をフェラスは今こそ理解できた。この人は自分が思いつかないさまざまな経験を積んできて、物事を深く先まで見通そうとしているのだ。

「フェラス」
「あ、はい」
「すまないが一眠りする。着いたら起こしてくれ」


 椅子を倒し背を預けて目を閉じたオビ=ワンは、ガレンとの思い出を辿るうち昔のことが甦ってきた。

 当時、アナキンは弟子だったが成人近くなっていた。上級ワパダンの実践トレーニングキャンプに出かけていた。久しぶりにあったオビ=ワンとガレンは連れ立ってシティへ食事に行き、待つ弟子がいない気楽さからかつい羽目をはずし、いつもより酒量が過ぎたようでオビ=ワンのほうが早く酔いが回った。

 さすがにジェダイだけあって、よそ目にそうとはわからない。けれどガレンはこれまでの長い付き合いから、オビ=ワンが外やテンプルの共有スペースでは見事な自制を保っているのは見掛けだけと見抜いた。住まいに戻って一歩室内に入ると、その場で倒れこんで朝までドアの前で眠り込んだ前例もあるので、オビ=ワンがいいと言うのを承知せず送ってきた。

「ほらオビ=ワン、ベッドにたどり着いたぞ。ブーツぐらい脱げるか?」
「もちろん――」
そうは言っても柔らかいシーツの感触が心地いいのかそのままごろんと横になってしまう。
やれやれとガレンは自分では起き上がりそうもない友人のブーツを脱がし、ベルトを緩め、ライトセーバーをはずして枕元に置く。
「ライトセーバーはジェダイの命です、マスタ――」
突然、オビ=ワンが目を閉じたまま口をきいた。
「そのとおりだ。ここに置くぞ」
応えてやるとオビ=ワンはむにゃむにゃと口の中で何事が呟いて寝返りをうった。
「ユーティリティベルトはここ。上着ぐらい脱いだほうがいいだろう?」
もはや答えなど返らないが、ガレンは律儀に話しかけつつ、オビ=ワンの衣類をゆるめ、カバーをかけてやった。

 こういったことは目覚めた時の様子や後から聞いてわかったことだ。オビ=ワン自身はところどころ記憶が跳んでいた。


「……水を飲むか?」
遠くから聞こえる声に、オビ=ワンはのどの渇きを感じて肯いた。
「起きられるか?」
首を振ると、後頭部が少し持ち上げられ、頭の下に枕が差し込まれたのがわかった。

 ひやりと水が唇を濡らした感触にオビ=ワンは薄く口を開けてそれを飲み込んだ。わずかばかりの湿りに、もっとと催促の口をあけた。と柔らかいものが口に押し当てられ、唇の隙間から水が注ぎ込まれた。のどを鳴らして飲み込むと、一旦離れたそれが再び唇に押し付けられ同じように冷たい水が口中に入ってくる。それを何度か繰り返し、オビ=ワンはもう充分のしるしに片手を少し振った。

 けれど、その柔らかい唇はオビ=ワンの唇の上で吐息が触れるほどの近くに留まっていた。
『――オビ=ワン……』
声ではないが囁くように意識に入ってくる呼びかけ、それは長い間忘れていた愛しい人を思い出させる。それに応えようと薄く口を開けたオビ=ワンの唇は又も温かい唇に被われた。
少し濡れたそれはオビ=ワンの柔らかい唇の感触を味わうように優しく押し当てながら何度も角度を変え、誘うようにときどき軽く吸い上げる。性急に求めてくる口づけとは異なり、とても心地よい安心感をもたらす。オビ=ワンはこれは現実ではないと思った。自分はきっと懐かしいあの人の夢を見ているのだ――。

 やがて、浅い呼吸の合間に開かれたオビ=ワンの唇の隙間から舌がさしこまれた。それは探るように少しオビ=ワンの唇の裏をなぞり、舌先で目指す舌を探り当てた。決して急がずオビ=ワンの動きを促すように何度も舌先で誘うよう触れてくる。オビ=ワンはひとつ深く息をして口をさらに開き、求めに応じた。

 何も考えられない甘くうっとりする口付けは続き、オビ=ワンはただ夢中で応えた。夢の中のはずなのに、熱い吐息、どきどき脈打つ鼓動、頬にふれる肌。暖かい指先がオビ=ワンの胸元にかかって衣の合せ目を広げ、口を離れた熱い唇が顎からその裏、感じやすいのど元を通り。肌蹴たオビ=ワンの白い胸元に再び熱く押し付けられた。

 オビ=ワンは不満そうに小さく呻いた。心地よい口付けをもっと感じていたかった。昔、遥か年上のオビ=ワンの恋人は、愛し合うときたいてい若い恋人の望みをかなえてくれ、うっとりする甘い口付けで充分オビ=ワンを酔わせてくれた。

 一瞬、動きを止めた相手は、仕方がないといったふうな吐息を漏らし、のど元から離れた。オビ=ワンの額と伏せたままの瞼と鼻の先に軽く口付けを落とし、再び誘うように薄く開かれたオビ=ワンの唇に戻ってきた。オビ=ワンは満足そうに息を吐く、そこから先は、記憶がなかった――。



 目覚めると朝になっていた。きゅうくつな格好でベッドの端に寝ていたことに気づき、隣の暖かいぬくもりに目をやると、黒髪の頭が見えた。ガレンはオビ=ワンの背に身を寄せうつぶせに寝入っていた。

 結局、両方とも酔いつぶれたまま寝たらしい。オビ=ワンは苦笑して身を起こし、友人を起こさないよう静かにベッドを抜け出た。

 歩くたびずきんと響く頭痛とむかむかする胸をかかえてバスルームに行く。始めは熱めにそれから次第に温くしたシャワーにぞんぶんにあびると、少し具合もましになってきた。バスローブを着、タオルで頭を拭きながら戻ると、リビングのソファにガレンが掛けていた。

「おはよう、ガレン」
「おは――」
口を利きかけたガレンが顔を歪ませ、額を押さえる。聞こえないほどの小声で悪態をつきながらぐったりと椅子に沈み込んだ。
「迷惑かけたな。今水と薬を持ってくる」


 ガレンは友人が持ってきてくれた水を飲みこんだあと、ソファの背にもたれて目を細めオビ=ワンを見ている。
「お前、大丈夫そうだな」
「と言えるほどじゃないさ。シャワーを浴びたらだいぶ良くなった。君もそうすればいい」

 向かい合わせに座ったガレンの視線はオビ=ワンの顔から頭、そして首から下に降り、裸足の爪先から再び上向きに辿り、最後にオビ=ワンの胸元で止まった。

 翠に縁どられた薄い水色の大きな瞳。肩に届く、湿り気を帯びて不規則にカールした輝く金褐色の髪。ゆるく合わせたバスローブから除く、普段きつく合わせたジェダイ服では決して見られない、ひきしまった白い肢体、のびやかな手足。湯を浴びてほのかに色づいたまぶしい胸元。


 ガレンは瞼を閉じ、再び眉をひそめて息を吐き出した。
「一生の不覚だ……」
その後に呟いた言葉は聞き取れなかった。

「大丈夫か?」
覗き込むと、ため息まじりの苦笑が帰ってきた。
「少しすれば良くなる。戻ってシャワーを浴びる」
「迷惑かけたな」
「――お前が先に潰れたのは初めてだな」
「うん?そうかな」
「ベッドに送り届けたはいいが、このありさまだ」
「一緒に寝たのはパダワン依頼かな?」
「そうだな。目出度くお前のすぐ後こっちも夢の中だ」


 やがてガレンは大儀そうに立ち上がり、それでも一歩部屋の外にでると見事にしっかりした足取りで帰っていった。
心配そうに見送るオビ=ワンに一言残して。
「お前はあの人に仕込まれたからな」
「クワイ=ガンはもっと強かっと思うな」
ガレンは黙って口元を上げただけだった。



 いつの間にか寝入ったオビ=ワンは夢を見ていた。大戦が始まる前の友人達たちとの懐かしい思い出を辿る夢だった。

 再会してから、常に何かに耐えているような元ジェダイマスターしか見ていなかったフェラスは、ついその表情に目を凝らした。

オビ=ワンは少年のように微笑んで、つかの間の安らかな眠りについていた。



END

  タトウィーンに戻ったオビ=ワンに一部始終を聞いたクワイ=ガンはオビ=ワンがガレンを連れて(拾って!?)こなかったので安堵したでしょう。けど、元弟子の変わらぬ天然ぶりに内心複雑だったのでは――(笑)
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