The Ring |
桜さまから頂戴した素敵マスター、サムネイルをクリックして、お楽しみくださいませ。桜さま、おしゃれなクワイ=ガン、本当にありがとうございました。 ↓
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「――マスター、失礼します」 返事はない。師が出かけて不在なのを知っていても、律儀にオビ=ワンは声を出した。レポート用の資料を借りる事もとうに許しを得ていた。 壁面いっぱいの収納棚に詰め込まれたファイルやら本やらディスク類は、オビ=ワンも手伝って一応整理はしてある。が、いつの間にか混ざり合うのが常だった。 「ええっと、たしかこの辺――」 爪先だってオビ=ワンは上段の棚に手を伸ばした。 「あった!」 目的のファイルを見つけ、指先で引っ張って出そうとしたファイルが落ちかかる。 「おっと」 とっさに下がって落下してくるファイルをキャッチしたオビ=ワンは、そのとき棚から小さな箱が床に落ちたのを見た。 膝を付いて箱を拾う。取り上げてみると、濃紺の布張りのケースだった。脇に小さく金文字で、コルサントで有名な貴金属店のロゴがあった。軽く指をかけると、蓋はあっけなく開いた。 「指輪……?」 一瞬、オビ=ワンはその指輪がクワイ=ガンの元弟子、ザナトスのものかと思った。が、すぐ打ち消した。師を裏切ってダークサイドに落ち、師ばかりか自分もザナトスには殺されかかった。最後の対決でザナトスの姿が消えた時、指輪も一緒に葬られていた。 ジェダイは私有財産を持たず、装飾品や貴金属なども身につけない。エイリアンやヒューマノイドでも出身種族の慣わしの飾りを付けるジェダイもいたが、クワイ=ガンもオビ=ワンもそういうものは一切なかった。 金色に輝くリングは確かに指輪のように見える。手にとってよく見ると、表面はなめらかだが、内側に文字らしきものが刻まれている。知らない惑星の文字のようだが、一部、銀河標準文字で刻まれた日付らしい数字があり、今から15年ほど前を示していた。 ――15年前、当然オビ=ワンは幼く、テンプルの幼年クラスにいてクワイ=ガンとは出会っていなかった。クワイ=ガンはザナトスと決別し、単独で任務をしていた頃だった。 指輪はクワイ=ガンの大きな手の指には小さそうに思えた。 クワイ=ガンのものでないなら、何故持っているのだろう。誰かに贈るつもりだったのだろうか?オビ=ワンはクワイ=ガンが長い間、幼なじみの女性ジェダイ、タールを愛していたことを知っていた。15年前なら、二人ともずっと若く、タールは目に傷も受けず、さっとうとした美しいナイトだった。贈ろうとして果たせなかったのか、拒絶されたのか? 漸くタールがクワイ=ガンの愛を受け入れた直後、彼女は敵の手にかかって永遠にクワイ=ガンの元を去ってしまった。 オビ=ワンは自分の手を見た。師に比べてひとまわりほども小さい自分の手。オビ=ワンは右手で指輪を持ち、そっと左手の指先にあてがってみる。中指にはややきつそうだ。薬指ならちょうどかも知れない。が、オビ=ワンは指輪をはめることをせず、箱に戻した。 「これは何だ?」 「すみません、資料を探している時に、棚から落としてしまいました」 ケースから取り出したそれを見ても、クワイ=ガンは怪訝な顔をしている。 「リングの内側に日付が入ってるようです」 ああ、とクワイ=ガンはようやく肯いた。 「惑星ビザンツで任務の最後に儀式に出席したとき身につけたものだ。儀式用の衣装を着てくれと頼まれてな」 「記念に贈られたものですか?」 ふむ、と何やら思い出をたどってるらしいクワイ=ガンの眉が寄る。 「式の後すぐ出立したので返せなかったのだ。先方は最初から贈りものと思っていたようだが」 掌にのせ、クワイ=ガンが呟く。 「むしろ余計な物だが、捨てるわけにもいかず、まあ、とっておいた」 「そうだったんですか」 自分の想像とまったく違っていたことに内心安堵しながら、オビ=ワンは相槌をうつ。 「その文字はどういった意味でしょう?」 「――何だったか、調べればわかるが」 「いえ。あの、どこに身に付けたんですか?指ですか?」 この問いに、クワイ=ガンは弟子の顔を見返した。師と目を合わせたオビ=ワンは青く輝く瞳をあげ、無邪気に答えを待っている。 「パダワン」 クワイ=ガンは弟子の肩に手をかけ、身を屈め囁いた。 「ここだ」 え?一瞬、何をされたかわからない弟子は、次ぎの瞬間師が触れたところを知り、 見る間に頬が染まっていく。 クワイ=ガンの唇が触れたのは、左の耳朶だった。 オビ=ワンは講義が済んだ後テンプルのアーカイブに来ていた。昨日、あの場はそれ以上聞けなかったが、察するに、リングを付けたのは耳らしい。 惑星ビザンツの住民は多民族で、さまざまな王朝が興亡を繰り返していた。クワイ=ガンの任務は内紛の調停だったという。より詳しく知る為に、というか、ビザンツの儀式でクワイ=ガンがどんな服装であのリングを身に付けたのか、オビ=ワンは知りたかった。 惑星の情報はすぐ得られたが、儀式用というと容易には見つからない。オビ=ワンはアーカイブの主ともいえるジョカスター・ヌーに問い合わせた。 「儀式の装束の画像?書庫かも知れないわね。少し待っててちょうだい」 オビ=ワンがカウンターの側にいると、ヒーラーのウィナが通りかかった。 「こんにちは、ヒーラー・ウィナ」 「あら、こんにちは。調べ物?」 「ええ」 ウィナは経験を積んだ優れたヒーラーで、クワイ=ガンもオビ=ワンも何度も世話になっていた。そ の時、ジョカスタが戻ってきた。 「オビ=ワン、ありましたよ。惑星ビザンツの儀式を録画したディスクが」 「惑星ビザンツ、おもしろそうね。私も見ていいかしら?」 「どうぞ――」 ディスクをジョカスタがセットし、何故かオビ=ワンは二人の女性に挟まれてモニターを見る事になった。 古に建てられた巨大な神殿で儀式は執り行われていた。出席者は皆たっぷり襞を取った長いローブを身に付けていた。王族や司祭らしい者は黄金の冠、長い耳飾、宝石をちりばめた首飾りを身につけ、黄金のサンダルを履いていた。 「古代そのままね」 ウィナが呟く。オビ=ワンも肯いた。 確かに出席している男性は皆長いローブでサンダルを履き、耳にリングを付けていた。その内、オビ=ワンはあることに気が付いた。どの男性もイヤリングをしているが、両耳と片耳に付けた人々の両方あることだった。年齢や身分によるのかと思ったが、そうでもないらしい。 居並んだ男性の服装は一様に思えるが、髪や目の色、年齢、身長もさまざまだった。 片方だけにリングをした背の高い長髪の男性はマスターに似ている、とオビ=ワンが思ったとき、声があがった。 「クワイ=ガン!」 「ほんと、クワイ=ガンだわ」 「マスター?」 ジョカスタがディスクを止めた。 「オビ=ワン、クワイ=ガンが任務で行ったのは15年前とか言ってましたね。これの撮影日付は、まさしくその時のもの」 15年前のマスター?白髪のない髪は濃く、豊かに肩を覆う。鳶色の髭が今よりやや短いが、引き結んだ口許と正面を見据える鋭い深青の瞳はまさしくクワイ=ガンだった。袖の短いチュニックを着て、一方の肩からたっぷりとドレープをとった紺碧の長いローブをまとい、足元は素足にサンダルを履いていた。 「ジョカスタ、あなた覚えてるかしら?ちょうどこの後、クワイ=ガンがこのイヤリングというか、ピアスをつけたままテンプルに戻ってきて評判になったこと」 「ふうん、そういえば噂をきいたわね」 「帰るなり医務室にやってきて、ピアスをはずしてくれって言ったのよ。ビザンツのピアスは、つけた後、溶接してあったので切らないと外せなかったのね」 「医務室で外したんですか?」 「やればできたと思うけど、結局、問い合わせて、専門の貴金属店に行って外したのだったかしら」 「――そうだったんですか」 「この装束にピアス、クワイ=ガンによく似合うわね。そう思わない?オビ=ワン」 「ええ、まあ……」 「なんていうかエキゾチックで――」 普段からにこりともしないジョカスタが言葉を続けた。 「ワイルド」 住まいに戻ったオビ=ワンは自分の部屋でクワイ=ガンのホロを見ていた。先ほどの部分をコピーしてもらったのだった。自分の知らないマスターの姿、今よりずっと若く精悍な姿はピアスのせいもあってか、ずいぶんと雰囲気が違うように感じられる。 オビ=ワンが初めてクワイ=ガンにあったころは、既に若いとはいえない年齢で、経験を積んだ熟練のマスターだった。威厳があって沈着冷静。最初感じた印象は師弟として行動を共にするうち変わってきたし、オビ=ワンが成長するにつれ、年齢の開きも普段はそう感じなくなっている。が、今日のように何かのきっかけで、自分が知る事ができなかったクワイ=ガンのずっと若々しい姿をみると、うれしいような、口惜しいような、何故か落ち着かなくなってしまう。 ――確かに、ピアスをしていたマスターは、ワイルドだ―― 今まで、そんなこと考えたこともなかった。その時、いつものフォースを感じた。クワイ=ガンが帰ってきたのだ。オビ=ワンは立ち上がって部屋を出た。 食事を終え、レポートの進み具合や講義の様子を問われる。昨日のレポートは本日提出したし、明日は講義がなかった。任務の予定は少し先だった。 「よかろう」 クワイ=ガンはデータパッドを閉じた。 「他に何かあったか?」 「あの、授業とは関係ないんですが、惑星ビザンツのことで」 「昨日の件か?」 「アーカイブで調べてリングのことはわかりましたが、一つだけ疑問があって」 「うん?」 「両方の人と片方の耳だけに付けた人がいたんですが、何故でしょう?」 「ああ――」 「マスターは片方だけなんですよね」 クワイ=ガンは口許を上げると、弟子のブレイドを指で持ち上げた。 「片付けたら私の部屋へおいで。ゆっくりと、ベッドで話そう」 そっとブレイドの先に口づける。 「はい……」 オビ=ワンは目を伏せながら、応えた。 オビ=ワンが入っていくと、クワイ=ガンはベッドに腰掛けていた。サイドテーブルにあのケースがのっていた。 オビ=ワンはその横に自分のホロプロジェクターを置いた。 「アーカイブでコピーしてもらったポロです。いいですか」 クワイ=ガンが肯いたのでオビ=ワンはスィッチをいれる。まさしく金のピアスを付けたクワイ=ガンの姿が浮かび上がった。 「――よく、見つけたな」 「ピアスはこちらに戻ってから外されたそうですね」 「そんなことまで聞いてきたのか」 「ウィナから、偶然聞きました」 「ウィナ!まあ、彼女なら仕方ないか。他のやつらが外せとかそのままでいいとか勝手に騒いだとき穏便にやってくれたからな」 「それはマスターが――」 目立ち過ぎですからという言葉をオビ=ワンは呑みこんだ。 「急いでいたので外しそこねただけなのに、皆よくよく暇だったらしい」 「あの、それで、両方と片方の違いは?」 「ごく単純なことだ。ビザンツでは結婚する女性にリングを贈って指にはめてもらう慣わしがある」 「というと?」 「両方に付けてるのは現在決った女性がいない。やもめもそうだ。片方のみはその反対」 「え、マスターは片方だけでした」 「私はジェダイだから結婚しない。つまり、人に贈るつもりがないから最初から片方だけにしたんだ」 「そうだったんですか」 クワイ=ガンはケースをからリングを取り出し、掌に乗せた。 「店で外してもらったとき、店員がピアスとして使わないならリングがいいと言って切れ目を治してくれた。どちらにしろ用がないので、仕舞いこんだまま忘れていた」 「――私は、ピアスをしたマスターを見られてうれしかったです」 ためらいがちに、それでも嬉しそうにオビ=ワンは師に笑顔を向けた。 その言葉にクワイ=ガンは一瞬眼を見張り、何ともいえない表情になり、そうして、口許に笑みが浮かんだ。 「はめてみるか?」 「え?」 返事を待たずにクワイ=ガンは弟子を引き寄せ左手を取った。親指と人差し指で持った指輪をそのままオビ=ワンの薬指にすべらせる。 「ちょうど、いいんじゃないか?」 「はい……」 オビ=ワンは少し手をかざし、リングがはまった左手を不思議な面持ちで眺めた。 「刻んだ文字はビザンツ語で尊敬と愛情だ」 「尊敬と愛情……」 青緑色の瞳を上げたオビ=ワンをクワイ=ガンの口がやさしく塞いだ。 ややあって、顔を離したオビ=ワンは師の肩口に頬をうずめていた。クワイ=ガンの手がやさしく弟子の背をなで、囁く。 「よければ、それはお前が持っていないか?」 「マスター……」 オビ=ワンは瞳を上げ、微笑んだ。 「お気持ちはとてもうれしいんですが、ジェダイには必要のないものです」 「そうだな――」 「……でも、今夜一晩だけこうしていてもいいですか?」 「今夜だけ?」 オビ=ワンは眼を見合わせながら、右手でクワイ=ガンの頬に触れた。 「こうして指にはめてくれたあなたの気持ちを、少し時間をかけて味わいたいんです」 「――欲がないくせに、思いがけない事を言う」 「あなたに関しては人一倍欲張りなんです」 オビワンの手を取り、クワイ=ガンはリングをした恋人の指にゆっくりと口づけた。 「では、どうやって応えたらいい?」 「ご存知でしょう」 「多分」 背を強く引き寄せられ、オビ=ワンは吐息をもらして目を閉じた。 End ゴールドリングのピアスをした30代後半のマスター、もといリ@ムの写真をみると、雰囲気が違う〜。なんと言うか、渋くない!青年!これはこれでくらくらするフェロモンだけど、あの大人の滲み出る色気には足りないなぁと。やっぱりいい男は歳月が作るものなんだ!いや、単に自分が芯からオッサン好きなことを自覚しました(笑) |
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